リベラル・デモクラシーの現在

専門書籍

(ネオリベラルとイリベラルのはざまで)

戦後デモクラシーの終局をどう乗り切るか

樋口陽一 著

はじめに

デモクラシー(公の事柄)・リベラル(基本権)思想の自由・表現の自由 

(議会制・国会主権 )民主主義 ~ デモクラシー(公の事柄)選挙という形

「四つの89年」

1,989年(バブル崩壊)・1,889年(大日本帝国憲法)・1,789年(フランス革命

人権宣言)・1,689年英マグナカルタ(権利章典)

Ⅰ、リベラル・デモクラシーの展開そしてその現在

1,945年~1,989年~2,019年

・A型(英)マグナカルタ~「王国貴族および庶民の権利」~国会主権

・B型(仏)人権宣言(憲法制定権力)~ 法の秩序を作る

憲法に限らず、法は解釈されたうえで適用される。(違憲審査制)

・ドイツは「立憲君主制」・アメリカは合衆国憲法(大統領制)

・日本の明治憲法をどう読むか(立憲対非立憲)

“天皇は神聖にして侵すべからず”(立憲政治)・大正デモクラシー(民本主義)

・戦後デモクラシー(ポツダム宣言受諾後、戦後民主主義)

選挙結果万能多数決主義

・「1,955年体制」保守合同(利益集団)・パックスアメリカーナ(米国優越)

・国境を超える「ネオリベラル化」の中の「イリベラル」非西欧世界からの拡散

・二つのデモクラシー 古典的・マルクス主義

・2,008年リーマンショック(グローバリゼーションの拡大)

・イリベラル(寛容さを欠く)というウイルス

2,001年9・11~貧困格差の拡大への暴力

日本においては民主党政権時(2,009年)「民の」名において選挙で選ばれた政治家優位とする国民主権~(霞が関官僚やNHK、内閣法制局に対する)

・その意味で、2,011年「自由民主党憲法改正草案」は重要な意味を持つ。

・近代資本主義の論理(ダブルスタンダード)

「言論の自由」と「経済的自由」どちらを重視するのか~弱いほうに味方する

・逆二重の基準 ~ ネオリベラル、新自由主義

レーガン、サッチャー政権に見る指導的大国の政策システム。「岩盤にドリルで穴をあける」

・55年体制から規制緩和路線

黄金の30年(高度成長期)80年代より規制緩和路線(規制解除、格差拡大)

・社会的公正を掲げる政党 ~ 文化的価値

・経済的自由を掲げる政党 ~ 自民党他

・文化戦争へのシフト(所得の再配分)~ 価値問題~環境問題

・歴史的背景

1,932年衆院選で政友会政権の大勝~「5・15事件」(犬養毅暗殺)

1,936年「2・26事件」~37年「支那事変」~日中戦争へと拡大

Ⅱ、戦後民主主義をどう引き継ぐか(遺産の正と負)

前提;日高社会学がいま持つ意味

「われわれには、集団に対する義務の外に、自己に対する義務というものがある。自己に対する義務を放棄することは、人間であることを放棄するに等しい」

・日本の敗戦をアジア開放として考える。

・「国家目的(公)」目的と「醇風美俗(私)」の循環~「結託と再結託」

「会社人間」と「古き良き日本」

公共空間と私的空間を縦横に行き来するための「聡明で大胆な覚悟」

・1,960年代 ; 高度成長と民主主義 ~ 集団への個人の埋没

・1,970年代以降 ; 「経済大国の盛衰と憲法」

「護憲派」は、「護教派」になるな。「無力な目」ではなく「自立した目」を持て「改憲派は百鬼夜行」だ。専門家たちの間で論議が尽くされたとする一方で、肝腎な民衆に届いていない。憲法というものは、そもそもどういう目的で作っているのか。当たり前のことを云い続けること

・「三木清の死」 1,945年獄中で亡くなる。

・戦後責任の問題点

保守、革新 ~ 軍国主義から民主主義(生活保守、快適な哲学、安楽な生活を求める、人形となっていない人間

「生活保守と快適の哲学」~ 人間を人形のようにしてゆく恐れ

綜合を目指す力を断念して、分断と排除に向かう社会の有様。

野党に対する「寛容と忍耐」を強いる為政者の言動

・国民主権を前提とした儀礼的存在としての「天皇」という憲法案

・「押し付けられた憲法論」~(第9条懲罰論)

植民地支配と侵略に対する自己批判

1,995年~戦後50年村山談話~2,015年~戦後70年安倍首相談話

2,017年「日本とアメリカの東アジアにおける歴史的な古傷」と題し

1,905年、桂首相とクフト(米)陸軍長官との密約。

アメリカのフィリピン領有、日本の韓国併合、中国大陸侵略と真珠湾攻撃

Ⅲ、「近代化モデル」としての日本

前提 ; 改めて「四つの89年」

「西洋化ぬきの近代化」VS雑種としての憲法文化

1,889年憲法と「和魂洋才」論~“富国強兵”“工場と軍艦”技術(テクノロジー)~ 西洋の立憲主義の大きな影の部分(植民地支配は普遍ではない)

・「和魂漢才」~ 菅原道真「知」

・「一国固有か諸国共通か」~ 穂積八束と美濃部達吉

・中国、インド、トルコに見る経済発展という「洋才」

・日本の知識人は、二階建てに住んでいて、二階には、古今の西洋の思想家や学者が並んでいるが、一階には、それまでの日本の生活がある。

・2,012年、自由民主党「憲法改正草案」平成24年4月27日決定

脱近代憲法としてのモデル性「日本国の象徴」と「日本国民綜合の象徴」天皇

・天皇の国事行為を限定的に捉えることの意味

前広島市長秋葉忠利氏≪数学書としての憲法・天皇論)

「三権が憲法違反を犯す時」天皇の出番がある。という定式化には同調できません。立憲主義や法治主義の否定、国そのもののそんざいが問われるときの実在的な要請としての天皇の行為」いや、要請ではなく義務としての行為」

・文言に即して読む2012年草案 ―「個人から人へ」

「個人」として尊重されるから「人」として尊重されるへの変更。

前文は、全て書き換えられます。もう一つの特徴として、「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」とある。そのような基本構造の中へ「国防軍」を位置ずける。次いで「戦争の放棄」から「安全保障」へと変えられ、限定なしの「自衛権」が明記される。尚、天皇を「元首」と規定します。 又、統治機構の部分については、衆議院の解散を内閣総理大臣が決定することを明記し、首相中心主義を憲法規範化しようとしていることに特に注意しておきましょう。

・憲法改正の作法と没作法

「加憲」ということの法的効果

憲法第九条の条文を変えることなく自衛隊を明記する。いわゆる「加憲」案

今後に向ける意見の主張を不可能にする。「後法優越のルール」が当てはまる。

・「とらわれることなく柔軟に議論」する?

2005年7月「ポツダム宣言というのは、アメリカが原爆を二発も落として日本に大変な惨状を与えた後「どうだ」とばかり叩きつけたものです」という発言を記録に残しているほど、事実の重みに「とらわれ」ない首相のことです。

“いろんなことをおっしゃっているだけだ「とらわれることなく」というのだから言いたいことを云おうではないか”

・国会議員の職責とは

他の政治課題と並べて憲法改正の重要度を世論調査の回答を見ても、憲法改正の優先度は最も低い。

実際、気候変動化の環境破壊と資源枯渇、原子力はじめ高度技術のもたらす問題性、人口動態の偏りと移民問題など差し迫った課題が突きつけられています。「それでもどうしても、憲法改正だけはさせてくれ」という訴えに優先度を与えるかどうか、議員それぞれの見識が問われている。

・何に「とらわれ」ているのか?

戦後リベラル・デモクラシーからの離反 ~「戦後レジームからの脱却」

・「保守主義のグローバルな危機」

アメリカ(トランプ現象)イギリス(EU離脱)~「価値を投げ捨て」

ドイツ、スペインでは「侵食され」フランス、イタリアでは「骨抜き」にされているという表現で状況を捉えています。

・日本における、かっての「55年体制」を中道右(自民党)と中道左(社会党)との共存路線と捉えるなら2012年以降の新しい右(極右路線)が選挙を通じて「ポピュリズム」の台頭として問題化されてくる。

「国会」は首相官邸「内閣」の意向に沿って審議を進め「裁判所は」高度に政治性を帯びた国家行為は司法審査になじまないとする。民主主義は多数決と同時に少数意見の尊重が肝心だ。国政の歪みを正すには改憲も避けられない

・「国会改革こそ、改憲の最重要事項」~ 衆院解散権も憲法に規定したい。

以上 2020/08/14

コメント