日米地位協定入門

前泊博盛 著

1,「日米地位協定」とはなんですか?

・アメリカが軍隊を配備し続けるための取り決め

在日米軍が占領期とまったく変わらず行動する

・日本における米軍の強大な権益についての取り決め

・1945年、米軍が日本国内に獲得した巨大な権益

2,「日米行政協定」について

・日本の全土基地化を目論む協定。

・在日米軍基地の自由使用を取り決めた協定。

・1952年、旧安保条約 ~ 1960年、新安保条約に取り込んだ協定。

サンフランシスコ講和条約(平和条約)から独立への過程の中で

米軍と米兵はかっての占領期と同じく日本の法律に拘束されず、自由に行動できるとした協定。

・東京をはじめとする30の都道府県に米軍が駐留(治外法権)する。

ダレスによる「戦後体制」(サンフランシスコ体制)の三重構造

行政協定 > 安保条約 > 講和条約

日本から確実に基地の権利を獲得するために寛大な講和条約を用意。

このサンフランシスコ講和条約は豪華なオペルハウスで48か国代表との間で執り行われた。

一方の安保条約はあまりにアメリカにとって有利な特権を認める条約であることと、逆に日本にとって売国的な条約であったためダレス自身がソ連や英など西側諸国から妨害が入ることを警戒していた。

そんななかで安保条約の全文が発表されたのは調印の二時間前。

こうして旧安保条約は内容も日時も誰も知らない経緯を辿るのである。(吉田首相単独の事実上の密約として結ばれた)

3,地位協定の問題点(不平等を許す密約)

  • 1,米軍(米兵)が優位に扱われる(法の下の不平等)
  • 2,環境保護規定がなく(法の空白)
  • 3,米軍の勝手な運用(恣意的な運用)
  • 4,協定を守らない(免法特権)
  • 5,日本の法律が適用されない(治外法権)
  • ・日本語の「正文」が存在しない。英語の正文のみ
  • 日本語では「訳文」(仮訳)であり、条文の解釈権が永遠に外務官僚の手に残される。「正文」ではなく、「公文」であるとする。もちろん「訳文」(仮訳)でもない。
  • 「戦後日本」のもっとも重要な基礎であるべき講和条約に「正文」がなかったこと。そしてこのひどい条文(地位協定)は国民の目に触れない形で安保条約に入れられ講和条約の調印から半年後に作られ日米行政協定のほうに押し込まれ何重もの隠ぺいの上に行われたものである。
  • ・吉田外交の最大の欠点(対米従属路線の起源)
  • 国会や世論のチエック機能に頼ることを自ら拒否したことでアメリカ依存の秘密外交の道を転がっていく事となる。
  • ・米軍は何も制約されない、日本国内でただ自由に行動できる。
  • ・本来は絶対にあってはならない植民地的状況をなんとか独立国の法体系の中に位置づけるふりをしようとしているからなのです。
  • それが沖縄だけの問題ではなく日本全土に及ぶのだ。
  • 之を文書化して無法状態を認めてしまう。日米ガイドライン(指針)。航空機(米軍機と国連の軍機)は、適用除外とする。
  • ・1960年代に米軍が沖縄高江村に作ったベトナム村。
  • 日本人を標的にした軍事演習の実体。
  • オスプレイの低空飛行訓練ルートへの反対運動

4,「第三者行為論」とは

・1993年2月、最高裁判決

「第三者である米軍の飛行を規制する権限は日本政府にはない」

日本の司法機関は、米軍が相手の場合には、いつも腰が引けてしまう。

・日本の司法を機能停止状態に追い込んだ在日米軍問題

・フイリピンは1947年、米比軍事基地協定の付属文書でも、国内で米軍の使用できる基地として明記されているのに、日米間ではそうした記述はなく日本全国どこでも基地にできるというのが本当なのです。

基地を使用する権利ではなく、米軍を日本国内とその付近に配備する権利。日本国の安全と極東における平和と安全のために必要だとアメリカが言えば日本側は断ることが出来ない。全土基地方式

5、形だけの「相互防衛条約」

・本来、自国の憲法上の規定および手続に従って行動する事である。

アメリカと同盟を組んでいること自体が日本の安全保障である。日本が血を流してアメリカを守らない以上、アメリカが血を流してまで日本を守ることはしない。核の傘などの大きな枠組みの提供はするが、日本の国土防衛はもちろん日本の役割である。これが国際常識であって、之をきちんと自国民に伝えず、アメリカが一方的に助けてくれるような幻想を振りまいているのは日本の官僚、学者、マスコミを中心とした安保村の一部の輩である。

・日米安保条約第10条 ~ 条約の期限

1970年以降は、1年ずつ自動延長が基本路線としている。

6、同じ敗戦国ドイツ、イタリアや隣の韓国はどうなっているか。

ドイツ(1959年、ボン補足協定) ~ 1993年に改定

イタリア ~ 政府(軍)の許可を受けなければならない。

韓国 ~ 韓米地位協定において環境条項を取り決めている。

7、イラクからの完全撤退理由(戦後8年後)

・2008年11月、イラクアメリカ地位協定によると元々この協定は、国際社会のルールの上からも、あくまでも秩序が回復した後は2011年までに完全撤退を前提としたものであった。 原則を貫くイラク

「戦争に負けたから仕方がない」とする日本人の感覚とは違い、(全くそんなことはないのです)。毅然として国際ルールにのっとって交渉することで隣にイランという大きな脅威のある国を擁する条件の中でも米軍を撤退させたではないですか。

日米安保第10条を使い一度条約を終了させ新しく結び直す事です。

同時に日米地位協定は全面的に改定する。

8、フイリピンが米軍を撤退させた経緯

・1991年、基地批准を拒否。 ~ 92年までに完全撤退

1986年にマルコス追放に伴いアキノ政権に移行。その後新憲法が制定され基地の原則禁止を謳い90年から基地問題を巡る予備交渉が本格化

フイリピン側団長(ラウル・マングラプス外相)米側団長(リチャード・アーミテージ氏)

フイリピン側の提示として、6箇所の米軍基地施設のうち5か所の返還を求めた。これに対しアーミテージ氏は猛烈に反発し、脅しをかけた。

投資の停止、基地労働者に対し解雇手当も貰えなくなるだろうと。

“自分の立場を押し通す事に慣れすぎた人物アーミテージ氏”

結果はその後劇的な展開を生む。ピナトウボ火山の大噴火が大きく関与し、92年11月までにすべての米軍基地は撤退の憂き目を余儀なくした。

その後両国の関係は「常時駐留なき安保」を掲げ、鳩山、小沢氏らが提唱していた「駐留なき安保体制」への転換を20年前に実現させています。

このフイリピンのナショナリズムに学ぶべき事多し。

ASEAN(東南アジア諸国連合)10か国内には米軍基地はありません。基地はなくても、地域の安全保障の仕組みは機能しています。

米軍が去った後、中国に南沙諸島を実効支配されたではないか。だから尖閣諸島を守るためには沖縄の海兵隊は必要である。ところが実際には小競り合いはあるが中国が特別に実効支配しているわけではなく、一番遅れて乗り出してきて、一岩礁を支配しているに過ぎないという。

・日本の尖閣問題との大きな違いは、領土問題が存在するという事については、関係国すべてが(ASEAN諸国)認めている。

タイ、フイリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの10か国には基地は存在しません。

9、「日米地位協定」がなぜ原発事故や再稼働問題、検察の調書捏造問題と関係があるのか

憲法を表の法体系とする中で、その裏側で米軍基地をめぐってアメリカが、日本の検察や最高裁を直接指示するという違法な権力行使が日常化してしまった。やがて日本の官僚たちまでが国内法のコントロールを受けない存在になってしまいます。

福島原発事故という大事故を引き起こし、20万人近い人々に負担を強いておきながら、それまで絶対安全だと言い続けた関係者たちは誰も罪を問われず責任も取らない。それどころか安全性が確認されたなどと気が狂ったような事をいって、再稼働を推進しようとさえしている。なんと恐ろしい事でしょう。

(ドイツ、イタリア、スイスが全廃に向かっているにもかかわらず)

警察や検察と云った公的機関が捜査に入らず、事故を起こした側が現場を封鎖して証拠隠蔽した挙句、再発防止策をまともに執ろうとしていない。普天間のヘリ墜落事故の巨大なコピーだと言えまいか。

大きな過ちを犯し無数の人々を傷つけた当事者が何の反省もせずに平然と同じことを繰り返そうとする非人間的な「何か」が存在する。

  ・日本は法治国家ではないとする。

   国民は、市民は法律を犯せば、すぐにつかまり罰せられます。交通違反然り。しかしその一方では、国家権力の行使を制限すべき憲法が全く機能していません。だから法治国家ではない。

・2008年、アメリカの公文書によって立証されています。~ 新原昭治氏(国際問題研究家)

・ジャーナリスト末浪靖司氏

「なにしろ米軍基地をめぐる最高裁での審理において、最高検察庁がアメリカの国務長官の指示通りの最終弁論を行い最高裁長官は大法廷での評議の内容を細かく駐日アメリカ大使に報告した挙句アメリカ国務省の考えた筋書きに沿って判決を下したことがアメリカ側の公文書によって明らかになっているのです。そんな国をどうして法治国家と呼べるのでしょうか。又この重大な事実を報道されない大手メディアこそ民主主義国家でない何よりの証明だと思います。

10、砂川裁判とアメリカの介入

1957年7月、米軍立川基地拡張工事をめぐるデモ隊逮捕事件

一審判決で憲法違反として無罪となる。 ~ 1959年伊達判決

その後、新原昭治氏の資料によると

マッカサー駐日大使から藤山外相への働きかけにより(立証)

9条「解釈改憲」から密約までの対米従属の正体(立証)

・末浪靖司氏の資料によると

  • ①田中最高裁長官が伊達判決の10年前からアメリカの監視対象となっていた。
  • ②田中長官への工作(ロックフエラー財団による法律書の寄付)
  • ⑶田中長官がアメリカ側に最高裁の評議を報告するようになった。
  • ④アメリカが長期にわたり日本を研究した。
  • ⑤最高裁だけでなく最高検もアメリカ国務長官の指示通り最終弁論を行っていた。

・安保条約は日本国の憲法よりも優位(上位)にある。

最高検察庁  外務省アメリカ大使  アメリカ国務省

「憲法判断が出来ないとする最高裁解釈」

・安保条約そのものではなく < 安保条約ごとき ~「高度の政治性を有するもの」というあいまいな定義。ここにアメリカ自身ではなく、「アメリカの意向」を知る立場にある(解釈する権限を持つ)と自称する日本の官僚たちの法的権限が生まれるのです。

・次に憲法を機能停止に追い込むための法的トリックが原子力分野にも通用されるようになった。その行き着く先は、原発再稼働という狂気の政策である。「戦後日本」という国家では、安保を中心としたアメリカとの条約群が自国(日本)の法体系よりも上位に位置している。

・1978年、伊方原発訴訟 ~ 柏木賢吉裁判長

原子炉の設置は、国の高度の政策的判断と密接に関連することから原子炉の設置許可は ~ 国の裁量行為に属する。

・原発の安全性の審査は ~ 内閣総理大臣の合理的判断にゆだねるのが適当(相当)である。1992年、最高裁判事  小野幹雄

三権分立の姿勢はどこにもなく、只無条件で従っているだけである。

放射性物質は、汚染防止法の適用除外とする等、アメリカの意向をバックにした行政官僚たちが平然と憲法違反を繰り返すようになりました。

「法律が憲法に違反できる」どんな独裁国にも存在しない

  • 1,砂川裁判における「統治行為論」
  • 2,伊方原発訴訟 「裁量行為論」
  • 3,米軍機爆音訴訟 「第三者行為論

*今後どうすれば憲法をきちんと機能させることが出来るのか。

国民の人権を守る政府を持つことが出来るのか。

11、日米合同委員会とは何ですか。(密約製造マシーン)

米軍の法的地位は、日本政府よりも高く、事実上、行政権も司法権も持っています。しかしそれがあまりにもあからさまになってしまうと困るので日米合同委員会というブラックボックス(密室)を置きそこで対等に協議しているふりをしている。1951年の吉田秘密外交の負の遺産である。

12、米軍基地問題と原発問題はどのような共通点があるか。

1、安全神話の流布

交付金 ~ 補償金、雇用政策、地域振興策

2、受益と被害の分離

自分のエリアには、危険なものは造らせない

3、管理、運営、危機管理の「他人任せ」

    「電力会社任せ」「僻地への押し付け」「沖縄任せ」「アメリカ任せ」

4、政策担当者や専門家らの思考停止」~抜本的解決対処策の欠如

専門家、担当者不在と国民の思考停止

5、チエック側と運営側との馴れ合い体質

天下り人事、利権の分配

6、情報の開示がない隠ぺい体質

7、国民の無知と無関心

13、地位協定の問題は解決できないのか

出来ない理由が次々と出てきて、国民の無知と無関心が深く関わっていて官僚や政治家の無能力と無気力を生んでいる。

13、外務省の機密文書、「日米地位協定の考え方」とは何か。

外務省の裏マニュアル。その運用の基本姿勢は、米軍優先・アメリカ優位の解釈、思いやり予算毎年2500億円

以上 2014/08/01

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