教える 所感

専門書籍

出口治明 著

始めに

古典が解らないのは、読み手の力不足。現代本が解らないのは書き手の力不足。

時代背景が解らなければ表現内容を正確に理解できない。だから、古典は難しい本居宣長や「万葉集」や「古今和歌集」の時代の人たちでは「花や桜」という言葉に対する認識が違います。

著者の真意が伝わらず、何が書いてあるのかわからないのでは意味がない。

教えるということは「真意を腹落ち」してもらうことである。又、次の世代を育てるためでもある。

第1章、後輩たちに「社会を生き抜く武器」「自分の頭で考える力」

・教育の目的《⒉項目》

  • 人格の完成(自分の頭で考える力を養う)
    • 最低限の知識(武器)お金、社会保障制度、選挙等~世の中の仕組み

*「考える力」を身に着けるには、先人の真似から入る

・タテ、ヨコ、算数という「思考」の枠組み

タテ ~ 昔の人の考え方(将来を想像するには過去を知るしかない)

ヨコ ~ 世界の人

算数 ~ 数字

・社会を生き抜く「七つの武器」

  • 国家 ②政府 ③選挙 ④税金 ⑤社会保障 ⑥お金 ⑦情報の真偽見極める基礎

・国家とは

フランス革命にいう国民国家(ネーション・ステート)という「想像[中尾1] 共同体」

領土、人民、主権(統治権)~本質は警察や軍などの暴力手段を独占(合法的)

三権分立して、乱用防止を図る

・国民国家とは

国民の意識維持のため、国旗や国民祝日などを制定して一体感の譲成に努めている。近代における国民国家成立と同時に徴税権(負担の強要)を自治体から国家(政府)に上納された。

日本においては、明治維新の際の天皇制(朱子学からの男尊女卑、家父長制)

・政府の基本施策は、 「負担>給付」

・オペレーションコスト(政府の管理コスト)を小さくすることで、シンプルに再配分(給付)する。

・日本の投票率がなぜ低いのか? 約52%(ワースト3位)

選挙につい

1、具体的にどう行動すべきか

2、無投票とはどういうことなのか

3、政治家は何をする人なのか

投票は自主的なものです。民主制の権利(独裁国家に住む人々にはない)

スエ―デンの小学生教育では選挙を「自分の意見を表明できる機会」と捉える。

・選挙の仕方

1、事前予想が出る

2、予想通りに満足するなら、3通りの方法がある ~ (結果は同じ)

ィ、投票に行ってその名前を書く ㇿ、白票を出す ハ、棄権する

3、不満なら違う名前を書く

*チャーチルの名言

1、立候補するのは自分を含め目立ちがり屋かお金儲けをしたいろくでもない人ばかり

2、こういった信用のおけない人たちの中からマシな人を選ぶ忍耐

3、民主政なるものは、最低の政治形態(王政や貴族政を除けば)

100%満足できないが他の人より多少はマシな人を選ぶことだ。

・選挙は、より良い人を選ぶための制度ではない。(単なる思い込み)

・日本は「改革」できない社会構造となっている

既得権益者(補助金など国から支給)が全体の約20%

わが国では、世襲議員が5割を超える異常事態です。(G7でも世襲議員は1割を超える国はないと言われている。)

政権与党が後援会組織を通じてかならず1票を投じます。後援会に押された議員が改革を行うはずはありません。新人議員にとっては約5倍に相当する闘いです。野党連合を呼びかけて得票率を上げ無党派層に呼びかけて投票率を上げることでその差を縮める効果が出てきて頑張ってみようとなる。

・政治とは、税金の使い道を決めることです。

市民は所得の約4割を税金や社会保障、保険料という形で負担しています。

現在は国債費の割合が約23%(4/1)

借金(国債)は民主主義の正統性に抵触する。ヨーロッパ諸国ではほとんどの税収を消費税で賄っている。日本の現状は、「小負担中給付」~借金財政

・公的年金を信頼する3っの理由

  • 年金は所得の再分配 ~ 特別目的税の1種(社会保険

2、 年金より安全な金融商品は存在し得ない

3、 経済成長と良い政府のみが年金を担保する

金融機関が潰れても国は破綻しませんが国が破綻したら金融機関は潰れる

・財産の三分法 ~ 「財布、投資、預金」

「72のルール」  72÷金利(成長率)=元本が倍になる年数

8%時代  72÷8=9年 9年で100万が200万に

1% (現在)   72÷1=72年

・飢えた人に食べ物を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるのが教育

第2章、根拠に基づいて話す(選択肢を与える)

“好きこそものの上手なれ”~ 興味や関心をひきだす

・人と違っていいんだ(多様性)

・「伝わりやすくなる話し方」

結論を先に述べてそのあとで根拠(エビデンス)を提示する。(3つ以内)

相手のレベルに合わせた伝え方

・情報を整理する方法

  • 人に話す②書いた文書を人に見せる ~ インプット、アウトプット

・教育は世代レベルでしか有効ではない。ある程度は洗脳。

進化は最低50年くらい必要(2世代)。すぐ使えるものはすぐ使えなくなる。

AIもプログラミングも短い世代でどんどん変わっていく。

長生きしてきたと言うただそれだけで尊敬に値するという価値観は必要。

そうでなかったら、高齢化社会はうまく回らなくなる。

持続可能な社会を築くには人間の権利を平等に認めることが前提となる。

・財政健全化による教育支援

無償化促進のための借金財政は負担と供給のアンバランス

・過去における製造業の工場モデル(生産要素)~ 土地、資本、労働力

これからの時代は情報産業としての教育投資(諸外国の平均以上)が必要

第3章、尖った人を生み出すための高等教育

・高等教育の今後の課題

義務教育をベースにして個性を伸ばす教育

・小負担中給付は限界

消費税をEU 並みの25%程度にして教育医療の無償化を目指す

・70%から80%は民間の私立大学にいる日本の大学生。

世界では戦いの舞台は大学院に移っている。

・名古屋大学と岐阜大学が東海国立大学機構法人としての統合を目指している。(2020年4月1日)

・全世界2万を超える大学トップ5%(1000校)にはかなり入っている。

・GAFA(グーグル、アマゾン、フエィスブック、アップル)

ユニコン企業(創業10年以内、10億ドル以上の評価額、未上場のテクノロジー企業の4条件を備えたスタートアップ企業

・戦後教育の工場モデル型

文句を言わず協調して我慢強く働き続ける従順な人間養成の仕組みとして完成、素直で上司のいうことをよく聞く空気の読めるいい子たち

・これからのサービス産業モデルで求められる人材

常識を疑い、根底から考える力と生涯学習意欲を強く持った個性豊かな人材を輩出していく。ゼネラリストよりもスペシャリストを育成する。

今までの時代のように人口増加と高度成長路線にフイットした一括採用、終身雇用、年功序列、定年といったようなガラバゴス的労働慣行はもう限界

・新しい産業作りのキーワード

  • 女性 ~ 議員、会社役員らを積極的に起用する制度(クオーター制)
  • ダイバーシテイ ~ 混ぜれば強くなる
  • 高学歴 ~ 生涯学び続ける人材(学ぶことは楽しい自律学習)

・機械的平等主義が日本の教育をダメにしてきた~みんな同じ(一億総中流)

インターネット時代は検索の時代 ~ 仲間同士が学びあう

第4章、正しい人間洞察を前提にした社会人教育(仕事の教え方)

マニュアル化(誰がやっても同じ結果が出る仕組み)~暗黙の了解は誤解を招く、画一的に縛るのではなく個性や多様性を認めながら共有、平均化

・マニュアル作成のポイント(4項目)

  •  最初はマネージャーが作成(タタキ台)
  •  一本化する
  •  言葉の定義を明確化する
  •  定期的にアップデートする

・インプットを増やす方法(三項目)~ 「人、本、旅」

「2・6・2の法則」~ アリの集団に見るグループ形成

  • 下位2割の底上げよりも上位2割を動かす
  • 相手のレベルに応じて仕事量を変える~形式的平等ではなく実質的平等
  • 適材適所 ~ 人材の組み合わせ

終わりに

見事な定型文と美辞麗句の裏側にあるのは、完全な思考停止である

川の流れに流されていく人生が一番素晴らしい。就いたところでベストを尽くす。たいした仕事もせずに権利ばかり主張する人間、ありきたりな「皆様への感謝」を喜ぶような組織では発展は望めない。

以上 2020/08/04

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