嫌われる勇気

哲学関連書籍

岸見一郎;古賀史健 著

*“問題は能力ではなく、勇気なのだ”!

・原因論を目的論へと転換。~(アドラーの心理学)

どうすればよい対人関係を築けるかを知らないと、他の人の期待を満たそうとしたり、他の人を傷つけまいとして主張したいことがあっても伝えることが出来ず、自分が本当にしたいことを断念してしまう事がある。

“これは“常識へのアンチテーゼ”とも言えるだろう“

・フロイト(性欲と自我との葛藤)ユング(集合的無意識)の原因論者と

・アドラー(勇気)の目的論者  ~ 心理学の三巨頭

Ⅰ、過去に支配されない生き方 原因論の住人にならず目的論に生きよ)

・人は変わられるを前提に考えよ(目的論)

・生まれながらの不幸を否定する。「不幸である事」が自身の「善」

・道徳的な意味での善ではなく自分のためになる意味での「善」と捉える。

あたかも、仏法でいえば「願兼於業」の概念に当たる。

・変わらない自分への言い訳。(今のライフスタイルを選び直す)

Ⅱ、全ての悩みは対人関係

他者から嫌われ、対人関係の中で傷つくことを過剰に怖れている。

そういう自分の「目的」は、“他者との関係の中で傷つかない事”なのです。

しかし対人関係の中で傷つかないなど基本的にありえないし孤独を感じるにも他者が必要です。“個人の内面の悩みなどというものは存在しません”

なぜなら、どんな悩みであれ、そこには必ず他者が介在します。

*劣等感は主観的な思い込み

客観的な事実ではなく、他者との比較(つまり対人関係)の中で生まれた主観的な思い込みであり解釈なのですからライフスタイルを選び直せるチャンスと捉えることです。思い込みだからいくらでも動かせるではないか。

そこで、物の価値について考えてみよう。ダイヤモンドや一万円紙幣の価値は一つのコモンセンス(共通感覚)であっても客観としての価値ではない。なぜなら只の石ころであり、印刷物としての原価はとてもその価値はないという捉え方。

*言い訳としての劣等コンプレックス

  • 劣等感と劣等コンプレックスを混同しない。「見かけの因果律」

あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し納得させる。

*一歩前に踏み出す事が怖い、現実的な努力をしたくないタイプ。

今のライフスタイルを変える勇気をもちあわせていない。多少の不満や不自由があっても今のままでいたほうが楽である。

  • 自慢する人は劣等感を感じている。

優越コンプレックス(偽りの優越感、権威づけでしかない)

・経歴詐称、ブランド信仰タイプ。他者の価値観に生き他者の人生を生きている。過去の栄光にすがり一番輝いていた時代の思い出話ばかりする特異な優越感に至るパターンとしては不幸自慢のタイプ。

*人生は他者との競争ではない。

・誰とも競争する事無く(ただ前を向いて歩いていけばよい)

・同じでないけれど人間として対等 ・今の自分よりも前に進もうとすることこそ価値がある。・敵と見るか仲間と見るか。・権力争いから復讐へと向かっていないか。・非を認める事は「負け」ではない。・わたしは「正しいのだ」と確信した瞬間、すでに権力争いに足を踏み入れている。主張の正しさは、「勝ち負け」とは関係ないのだ。

・あなたが正しいと思うなら、他の人がどんな意見であれそこで完結すべきである。権力争いから降りる事は負けではない。

優越性の追求」とは、他者との競争によって行うものではない。

「人生のタスク」( 課題)をどう乗り越えるか。

1、仕事のタスク 2、交友のタスク 3、愛のタスク

*行動面の目標 ①「自立する事」 ②社会と調和して暮らせる事

*心理面の目標 ①「能力がある」 ②「仲間」であるという意識

1、仕事のタスク

一人で完結する仕事は有りません。(他者の協力なくして成立する仕事など、原則としてあり得ません。)

  この段階の対人関係でつまずいた人がニートや引きこもりと呼ばれる人たちです。例えば求職のために面接を受け何社も不採用となる。このような自尊心を傷つけられてまで働く意味がどこにあるのか解らなくなる。又は仕事で失敗した時などは仕事が嫌いになったわけではなく仕事を通じて他者から批判され叱責されることで、無能の烙印を押されることがかけがえのないわたしの尊厳を傷つけられることが嫌なのです。

2、交友のタスク“自分が変われば周囲も変わる”

3、愛のタスク。“逃げてはいけない、束縛することは認めない”

4、「人生の嘘」から目を逸らすな“人生のタスクを回避する事態を人生の嘘”

善悪とも悪徳でもなく勇気の問題とする。(勇気の心理学)

Ⅲ、他者の課題を切り捨てる

承認欲求を否定する。他者から承認を求める事を否定する。

  • あの人の期待を満たすために生きてはいけない。

他者の期待など満たす必要はない。他者もまたあなたの期待を満たすために生きているのではない。むしろ、神なき世界のニヒリズムを克服するためにこそ他者からの承認を否定する必要があるのです。なぜなら、いつも他者の視線を気にして他者からの評価に怯え、自分が“わたし”であることを抑えている。自分本位に振る舞うことが出来ないでいる。傍若無人に振る舞えというのではなく「課題の分離」と云う考え方。

  • 「課題の分離」とは。「自分の課題と「他者の課題」とを分離する。他者の課題には踏み込まない。あるいは自分の課題に土足で踏み込ませない。

“馬を水辺に連れていく事はできるが、馬に水を飲ませる事は出来ない”

自分を変える事が出来るのは、自分しかいない。

  • 「他者の課題」を切り捨てよ!ここから先は、自分の課題ではないと切り捨てる。本来は他者の課題であるはずの事まで自分の課題だと思い込んでいる事が問題なのです。
  • ゴリディオスの結び目を断て!(アレクサンドロス大王の逸話) 常識へのアンチテーゼ
  • 承認欲求は不自由を強いる。他者の期待を満たすように生きるという事は、自分に嘘をつき、周囲の人々に対しても嘘をつき続ける生き方でもある。「他者の課題」に介入する事こそ自己中心的発想ではないだろうか。
  • 本当の自由とは!“自由とは、他者から嫌われることである”

カントの言う「傾向性」という欲望に抗うこと。他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれないのです。“あらゆる人から好かれる人生”と“嫌っている人がいる人生”があったとして、どちらか一方を選べと言われたら後者を選びます。他者にどう思われるかよりも先に自分がどうあるかを貫きたい。つまり自由に生きたいために。嫌われたくはないけど嫌われても構わない。幸せになる勇気には嫌われる勇気も含まれます。

  • 対人関係のカードは常に“わたし”が握っている。他者を操作しようとする考えは誤りである。先ず自分なのです。承認欲求に縛られると対人関係のカードはいつまでも他者の手に握られたままです。人生のカードを他者に委ねるかそれとも自分が握るか。

Ⅳ、世界の中心は、どこにあるか!

  • 個人心理学と全体論。これ以上分離できない存在だと捉え「全体としてのわたし」を考える事を「全体論」と捉える。
  • 対人関係のゴールは「共同体感覚」。“自己への執着”を“他者への関心”に切り替えていく。他者からどう見られているかばかりを気にかける生き方こそ「わたし」にしか関心を持たない「自己中心的ライフスタイル」

だから“他者への関心”に切り替えていくのです。

  • あなたは共同体の一部であって中心ではない。「所属感とは、生まれながらに与えられるものではなく、自らの手で獲得していくものである。」家庭に属し、学校に、企業に、地域社会に属しそして国家に属しと云ったように複数の共同体に所属している、目の前の小さな共同体に固執する事なく「より大きな共同体の声を聴け」と。
  • 叱ってはいけない、ほめてもいけない!
    • 縦の関係を横の関係に。対人関係を縦で捉えると、相手を自分より低く見て介入してしまう。背後にある目的は操作である。

「同じではないけれど対等」であるという横の関係で築くことが出来れば劣等コンプレックスが生まれる余地はなくなる。

  • 横の関係に基ずく援助を「勇気づけ」とする。親の期待に応えながら生きる事にうんざりしていたのではなかったか。「自分には価値があると思えたときにだけ勇気を持てる」。“わたしは他者に貢献できている”と思える事が大事で他者を評価する言葉はすべて「縦の関係」からである。
    • 自分の事を「行為」のレベルで考えず、「存在」のレベルで受け入れる。

「貴方が始めるべきだ他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく」(一人立つ精神)人間は自らのライフスタイルを臨機応変に使い分けられるほど器用な存在ではない。意識の上では対等であること。そして主張すべきは堂々と主張することが大切である。場の空気を読んで縦の関係に従属することは自身の責任を回避しようとする無責任な行為です。

もっと「いい方法を提案する」余地や「断る」余地もあったのではなか。

Ⅴ、「いまここを真剣に生きる」人生の意味とは何か

  • 自意識過剰がブレーキをかける。ありのままの自分による対人関係を回避しようとする。

2、「自己肯定」ではなく「自己受容」そして「他者信頼」と、「他者貢献」

自己肯定とは、自らに嘘をつく生き方である。

自己受容とは「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極める事。

われわれは、能力が足りないのではなく、ただ勇気が足りてないだけだ。

3、信用と信頼。信用とは条件付き(クレジット)信頼とは他者を信じるにあたって、一切条件をつけない。信頼することを怖れていたら、結局は誰とも深い関係を築くことは出来ない。

4、仕事の本質は他者への貢献。なぜ働くのか。それは他者貢献の為であり、大富豪や慈善家が働き続ける理由でもある。

  • 若者は大人よりも前を歩いている。わたしは誰かの役に立っていると実感し、ありのままの自分を受け入れることが出来るようになる。“生き方まで変われる”此処までになるには、それまでに生きてきた年数の半分が必要とされるようだ。つまり、40歳から学び始めるとして、プラス20年で60歳までかかる。20歳から始めるとプラス10年で30歳。それだけ若い人は人生の早い時期に学び早く変われる可能性があるわけです。世の大人たちより前を歩いていることに為ります。

道に迷うもよし、ブレるもよし、あくまでも縦の関係に従属する事なく嫌われることを怖れないで、自由に進めばいいのです。もっと多くの大人たちにも知ってほしいと願っています。年齢に関係なく人は変われるのです。人生の調和を欠いた神経症的なライフスタイルをもった人たちは、口々に“みんな”、“すべて”といった言葉を使いますが注意したい。

ユダヤ教の教えに、次のような譬えがあります。

10人の人がいてそのうちの一人は、何でも反対してあなたを批判してあなたを嫌ってくるので、こちらもその人を好きになれない。

しかし二人の人が親友に為れる。残りの七人はどちらでもない。

調和を欠いた人は、嫌いな一人だけを見て世界を判断するという。

そこで、他者への貢献感が幸福と結論づける。

  • 特別な存在でありたい人が進む二つの道

・健全な努力を回避して、他者の注目を集めようとする。

・安直な優越性の追求と云う ~ いづれは復讐に繋がる。

問題行動に走る子供(特別に悪あがきする)

  • 普通であることの勇気。人生は点の連続と捉える。計画的な人生など、それが必要か不必要かの以前にそれは不可能であると言いたい。
  • 人生最大の嘘

“いまここを生きない”事である。(“いまここ”を真剣に生きる事です)

  • 無意味な人生に意味を与えよ。「他者に貢献する」ことです。

世界とは他の誰かが変えてくれるものではなく、ただ“わたし”によってしか変わり得ない。あなたが始めるべきです。他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。

以上 要旨記述 2020/06/29

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