定本 「想像の共同体」

《ナショナリズムの起源と流行》

ベネディクト・アンダーソン著

(序文)

ナショナリズム発祥の地、南北アメリカについて(クレオールの先駆者たち)

西ヨーロッパと新世界に関わるナショナリズム

帝国主義列強国(英、仏、オランダ、ポルトガル、スペイン、合衆国)によって植民地化された東南アジア他について

「人口調査、地図、博物館」のデーターは東南アジアから

Ⅰ、序

ナショナリズムは、マルクス主義論にとって厄介な変則であり続けてきたのであり、正面から対決されることなく無視されることのほうが多かった。

国民を構成するということは、政治生活におけるもっとも普遍的で正統的な価値となっている。

・概念と定義

国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体(主権的なもの)

国民は限られたものとして想像される。

・かって歴史の一時代にキリスト教徒がキリスト教徒だけの惑星を夢見ることが出来たようにはすべての人類が自分たちの国民に参加する日を夢見ることはない。

・普遍宗教のいかに篤信な信者と云えども、宗教が現に多元的に併存しておる限り、成熟した国民は自由であることを夢見る。

この自由を保証し象徴するのが主権国家である。

Ⅱ、文化的根源

文化システムとしての、「宗教共同体と王国」という二つのシステム

・「宗教共同体」 ~ 古典的共同体

イスラム共同体 ~ モロッコからスールー諸島に至る

キリスト共同体 ~ パラグアイから朝鮮半島に至る

仏教共同体 ~ スリランカから日本に至る

儒教共同体 ~ 中国(中華)が加わる

・出版資本主義の果たした中心的役割

ラテン語(古い言語)~ シェィクスピア、デカルト、パスカル

俗語 ~ ブオールテール以降の文学

・「王国君主制国家」(古典的)

時間の了解、出版資本主義(小説と新聞を読む)代議制(選挙)

Ⅲ、国民意識の起源

人間の言語的多様性の宿命性に資本主義と印刷技術が加わり、新しい形の想像の共同体の可能性が創出された。

・紙はヨーロッパの発明ではない。中国の歴史からイスラムの世界を経て漂着したものだった。印刷術はヨーロッパに出現するおそらく500年も前に中国で発明されていたが、まだ資本主義が存在していなかった。

Ⅳ、クレオールの先駆者たち

時間・身分・空間的な旅

誕生から死に至る旅は、様々な宗教的な観念を生み出した。

旅の典型的な様式は「巡礼」である。出版時代以前には、想像の宗教共同体の現実性は止むことのない旅に深く依存していた。求道者たちが、ヨーロッパ全土から教学の地方的中心を求め、そこからさらにローマへと自発的に流れていったことほど全盛期の西欧キリスト教世界について印象深いものはない。偉大な教学施設では、共に集まって共同体を成し、こうした人々がその食堂に共に並ぶということによって、世俗的巡礼において重要なことは、絶対主義王政の台頭そしてヨーロッパを中心とする世界帝国の登場によってもたらされた巡礼路の変化であった。

・新貴族(主君の意志の発現として務めることの人材)

絶対主義の役人 ~ 封建貴族とは異なる旅をする。

彼らにとっては、故郷はなんらの内在的価値はない。

・人的互換性を補強する文書の互換性は、標準化された国家語の発展により促進された。いかなる文語であれ、独占権さえ与えれば国家語の機能を果たすことが出来た。俗語に独占権が付与されたところでは、中央集権化の機能がさらに達成された。

クレオール人は原理的に自己の権利を主張し得る政治的、文化的、軍事的手段をいつも持っていた。

武器、病気、キリスト教、ヨーロッパ文化に対し、本国人と全く同じ関係を持っていた。(分割統治政策の表現)

ポルトガル人の開拓した西半球で生まれたクレオール人は本国人と異なり、劣っているとされ、高位高官には不向きだとされるという大規模な奴隷制の復活を思い起こさせた。

18世紀に入り北アメリカで印刷業が発達する。すなわち「新聞」を発行するようになってからのことであった。

スペイン領アメリカにおいても南北を問わず市場の添え物として始まった花嫁、司教、価格の属する創造の共同体を創造した。

「我々のアメリカ人」と書いた事実

まさにスペインの外で生まれたという共通の運命

ラジオは1895年になって発明され、印刷物の浸透してなかったところに想像の共同体を聴覚的に表現することを、可能にした。

軍人の巡礼も文官のそれに等しく重要になった。スペインはアメリカに常備軍を駐屯させるだけの資金、人的資源も持ってなくて植民地民兵に依存。

クレオールの人種差別を強調するのは、半島人(ステーソ、二グロ、インデイゴこれら不遇の者たち)クレオール・ナショナリズムの勃興にあるからである

1776年の独立宣言が「人民」について語るのみで「国民」という言葉は、1789年の憲法においてデビューされた。

V、古い言語、新しいモデル

「あらゆる民は国民であり、それ自身の国民的性格と自身の言語を持つ」

古代派と近代派の闘い

・16世紀において、中国、日本、東南アジア、インド亜大陸の大文明

「メキシコのアテスカ、ペルーのインカ帝国文明」ほとんどヨーロッパキリスト教、古典古代人間既知の歴史とは全く別に発展したものであった。

・古い聖なる言語 ~ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語 ― 俗語のライバル

存在論的には対等のつきあいを余儀なくされ、出版資本主義市場においてはすでに始まっていて聖なる言語の降格をさらに完全なものとする。

もう一つ別の形の印刷物としての俗語化(楽譜)

ドブロフスキー、スメタナ、ドボルザークとヤナーチエク、グリーク、バルトークの登場こうした動きは今世紀まで続いている。

彼らは出版市場向けの生産者であり、(作曲家)消費者講習と辞典編集者、言語学者、民族学者、政治評論家らと結ばれていた。

・「国民は少数の人々がそうあるべきだと決断した時に生まれる」

産業革命という名称それ自体、言葉以前に英国に存在していた。1820年代英、仏の社会主義者ら(新しい集団)が発明したものだ。

Ⅵ、公定ナショナリズムと帝国主義

 「公定ナショナリズム」国民と王朝帝国の意図的合同 ~「帝政ロシア化」

ヨーロッパ諸君主の「帰化」と王朝権力の維持を組み合わせる方策

・ロマノフ王朝 ~ タタール人ラトビア人、ドイツ人とアルメニア人ロシア人とフイン人を支配

・ハプスブルク王朝~マジャール人クロアチア人、スロバキア人とイタリア人、ウクライナ人とオーストリア・ドイツ人

・ハノーバァー王朝 ~ スコットランド人とアイルランド人、イングランド人とゥエール人、ベンガル人とケベック人

・ブルボン家 ~ フランスとスペイン

・ホーエンツォレルン家 ~ バイエルンとギリシャ、プロシアとルーマニア

・ウイッテルスバハ家 ~ バイエルンとギリシャ

イギリス化 ~ 本国の中産階級(役人、供試、聖人、植民者)

・インドが英領となる(ビクトリア女王即位20年になって)

・日本における討幕に伴う尊王攘夷の成功の一因に、英国武器商人より購入のライフル7300丁(ほとんどが南北戦争の中古品)を効果的に使用したこと。

・日本ナショナリズムが帝国主義的性格を持った一つは、天皇を皇帝とし海外に雄飛せねばならぬと主張することは、きわめて説得的であると受け止める

「当時英国は、全世界に誇る大富豪にして、ロシアは地球北半の大地主なり」散粟の島を画定線として国際間における無産者の地位にある日本は正義の名において彼らの独占より奪取する開戦の権利亡きか。

日本化した朝鮮人、台湾人、ビルマ人

・19世紀ハンガリー・ナショナリズムの発展

マジャールナショナリズムの復活 ~「大オーストリア合衆国」

・大英帝国の領域

ウイザー家(古城の名称)、ベルサイユ(フランス、ブルボン家の宮殿)

ビルマは英領インドの一部 ~ インド人は官吏として用いられた。

シンガポールでは移民として勤務した。

・「日本陸軍の父」大村益次郎(長州藩の医師)

・「日本初期の王墓」 ~ 朝鮮出身者の説もあり(古墳)

これら古墳の調査を抑制しようとしている。

Ⅶ、最後の波

ハブスブルク、ホーエンツオレルン、オスマン、王家の終焉

民衆ナショナリズムと公定ナショナリズムの混合

「 植民地ナショナリズム」交通と通信  巡礼の地理

1、19世紀における「鉄道と蒸気船」・20世紀「自動車と航空機」

2、帝国的「ロシア化」~ 巨大な人口問題

内部官僚+医務官、灌漑技術者、農業指導者、学校教師、警察官

3、近代的教育の普及

・植民地ナショナリズムの勃興 

原住民の大土地所有者、大商人、企業家、専門職業者は稀な存在でありインテリゲンチャ―が植民地主義によって独占されるか、賤民(非原住民)事業化の階級で植民者の間で不均等に分有されていた。東南アジアの事例と同様スイスナショナリズムが最後の波の一部としてあった。

・20世紀のコミニュケーション革命の前夜に出現したことにより言語的一体なしに想像の共同体を表現することが出来た。主としてアジア、アフリカの植民地のナショナリズムの最後の波は「産業資本主義」によって可能となった新しい型の地球的帝国主義への反応として発生したものであった。資本主義によって民衆的ナショナリズムの創造を助け王朝を国民へと帰化させるよう駆り立てていった。~「ロシア化」なるものをヨーロッパ外にもたらす

国家と法人の官僚機構が養成する下級幹部の養成を目的に「ロシア化」学校制度が生み出され、それによって全く新しい「巡礼の旅」を創出した。

・この植民地国家の拡大は「土民」を同国人と見做すことになり、現地のブルジョワジーとは無縁の二重言語のインテリゲンチャ―であった。

・クレオール・ナショナリズム、俗語ナショナリズム、公定ナショナリズムは様々な組み合わせでコピーされ改良を加えられ広く大衆に対して出版を迂回する方法を見出すようになった。

Ⅷ、愛国心と人種主義

19世紀ヨーロッパ外で人種主義が発展したところでは、公定ナショナリズム(王族、貴族集団、上流階級)と俗語ナショナリズム(民衆)植民地のロシア化・帝国化概念の主要な要素

官僚機構の拡大と「ロシア化」推進する政策によってブルジョワジーに「貴族」することを許した。

ⅠX 歴史の天使

「連合王国の解体」

英国の政治形態と近代世界の他の政治システムの関係について

英国のシステムだけが最初の経験として他と違っていた。後のブルジョワ社会は、この初期の経験の発展を繰り返すことはできなかった。

「非人格的」国家という教義を生み出し、不均等的、統合的発展の法則」といった称号を与えられる初期の例であった。

・ロシア化を遂行させた「ボルシエビキ革命のモデル」は、20世紀の全ての革命にとって決定的であった。~ 革命を計画して成功させた毛沢東の巧妙な実験がヨーロッパの外における実効性を確証した。

・公定ナショナリズムの発明品と他のタイプの相違は「ウソ」と「神話」の違いにある。天使の目は「ウイークエンド」の後ろ向きに移動するカメラの目であり、無限に続くハイウエイの上、次から次と残骸が浮かび上がって地平のかなたに消え去っていく。~ この嵐が「進歩」である。

X、人口調査、地図、博物館(権力の三つの制度)

地表に平面図を具体化する現実的手段としていまや新しい行政機構とその主張を支援する「軍隊」にとって必要なものとなった。

領域、製図的基礎の上に置かれた。国家の考古学的部門は権威ある機構となり、有能な学者、官僚も生まれた。

歴史的地図 ~ 遺跡の考古学観光と結びつき一般化された。

人口調査、地図、博物館は、相互に連関することにより住民、地域、宗教、言語、産物、遺跡等々に適用できる。

・トータルな監視のイメージとして植民地国家がその支配下にあるすべてのものが「可視性」「通し番号」を持つことを条件としていた。

航海、天文学、時計製作、測量、写真、印刷などさまざまな技術の産物であり資本主義がその推進力となっていた。

XI、記憶と忘却

真空管と旧空間 ~ 時計の発明 ~ 併存感、兄弟殺し

記憶と忘却~死者に代わって話す

人物のこの世での話には始めと終わりがあるが国民にはそれと特定できる誕生はない。国民の伝記として模範的自殺、殉死、処刑、戦死、ホローコーストこれらの死は我々のものとして記憶、忘却されなければならない。

“旅と交通”

・批判的マルクス主義者と批判的自由主義者の双方にとっての意味 

  • ナショナリズムの理論的研究を非ヨーロッパ化      
  • 米国について       

出版資本主義、貢献的な恥愉的海賊行為、俗語化ナショナリズムとインターナショナルの分かち難い結びつき。

以上 要旨記述 2020/08/19

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