牧口常三郎の「人生地理学」を読む

村尾行一 著

*人生地理学とは

・人間と自然との関係、平和と民主主義、人間同士の関係、地理学と云う枠に収まりきらない世界観の書物なり。

・照葉樹林文化論から資本論までの領域に至る。

・牧口先生と知識人との関係において、志賀重昴(国粋主義者)、柳田国男(民俗学者)両者共に神道至上主義、(軍国主義者)となる。

「精神の偉人」在家仏法者(価値論を加え)創価学会創立者牧口先生

2代会長、戸田先生(原水爆禁止宣言)3代会長、池田先生(SGI世界宗教)

永遠の仏法指導者として、「師弟不二の精神を後世に」

第1章、牧口常三郎との出会い

九州山村実態調査報告書、虚構の柳田民俗学(常民思想)への批判をきっかけに世界を正しく認識するための書としての出会いであった。

森林機能論は山林有情論(牧口)へと移り“青は藍より出て藍より青し”の如くその弟子たちは、いずれも師を超えた存在を世に残した。

マルクスとエンゲルス、マックスウエーバー、アーサー・タンズリー、

デイーリッヒ、丸山真男、中尾佐助、廣松渉、宇野弘蔵等

第2章、共生を超えて「依正不二」へ

・人間にとって自然とは ~ 自然破壊と云われているが果たしてどうなのか。

  • 人間生活の存立基盤を人間自身がバカな事をして破壊した。
    • 自然は人間なしで46億年の地球の歴史を存在し続けてきた。
    • 人間と自然との関係~人間を主体に問題を立てる。(依正不二論)

正報(主体)人間と、 依報(客体)自然環境との関係

“夫れ十方は依報なり、衆生は正報なり、たとえば依報は影のごとし、正報は体のごとし、身なくば影なし、正報なくば依報なし。”正報(人間)あってこその依報(自然環境)、「正報をば依報をもって此れをつくる。」人間生活の手段は、その原材料すべて依報たる自然から人間が採取する。

*日蓮の言うこの依正不二論(生態系)を真に理解していない。だから「人間は自然と共生できるのか」といったナンセンスな発言が生まれるのです。

人間の存在は実体ではなく“関係態”である。関係として人間を見るとい

 った新しい人間観に牧口は立っていた。あたかも仏法で説く“縁起思想

  立脚している。地人相関=人生地理学=人間主体主義                                              

生態系とは「ある生物(主体)とその生物的並びに非生物的環境との相互作用のシステム」

「食物連鎖」と「植生遷移」

・植物  無機物を原料として有機物を生み出す(生産者)

・動物  有機物を原料として、それを消費する(消費者)

草食動物と肉食動物とが存在する。

・微生物 有機物を無機物に戻す(分解者)

敵対的共存者として殺し合いを現ずるがこれも生きるためでもある。動態的均衡を保つため(動きの内のバランス)生態系のバランスを保つため。

植生遷移

動物や微生物といった植物以外の生物における(種内競争)と植物間競争(種間競争)に見られるように、相反する事物の統合を認識の基礎に置いて

いる。仏法でいう「煩悩即菩提」「善悪不二」「悪人成仏」「生即殺」「生産と破壊」「均衡と攪乱」「発展と退化」

カルチャーとは(価値創造)

ネイチャー(野生・自然)に対する人間らしさ、教養、文化

第3章、あくまでも人間が主体(牧口思想の原点)

自然現象と人生との関係

人生にとってどのように関係するかの視点が「地人相関」の捉え方次第で違ってくる。自分以外の人間と関係を結びその関係を介して自然と関係していて、全く見ず知らずの赤の他人との関係が一般的であるが、たとえば港の重要性は誰人も認めるところだが、人間同士の共生の最も基礎的で重要な部分である「世界平和」なる概念は誰人も渇望しつつも現在も持て余している。

人間を生態系のどこに置くか

社会生態系学の「原論」としての地理的分布を為す人生もしくは社会現象を説明する科学としての領域とする。

中尾佐助の照葉樹林文化論(地人相関)

日本は縄文以来からの基幹文化として照葉樹林文化圏の東北地方と位置づけ、中央はヒマラヤの南麓のネパール、ブータン、アッサムから北タイ、南西中国(雲南省、貴州省)一帯に渡りナラ、ブナ文化の形成をなす。

この文化圏の特徴はモチ米を好み、赤米、イモ類、ワラビ、葛等をアク抜きして食べる。コンニャクイモを作り、柑橘や紫蘇を栽培する。麹を使い酒を醸造し茶の葉を煎じて飲む。味噌、納豆といった大豆の発酵食品を好み米と魚でナレずしを食べる。尚、蚕を育てて絹を作り、漆加工の木工品等を生産

しかもこれらは焼畑農業をその源としてきた。

・「虫瞰することによってこそ鳥瞰できる」 ~ 小田実(ベ平連)

大所高所からの見方(鳥瞰)に対抗して地べたをはいずり回る虫の(虫瞰)ように、市井の庶民の目線から捉える。備後表の畳に座り、瀬戸焼の陶磁器で飲食し、九谷や唐津、京の鉄瓶に湯を注ぎ煎じた宇治茶で一服。北陸、越後の白米を常食とし~コンビニ、スーパーには全国各地からの特産が陳列している。生活する場(目で見て耳で聞き感動し、動き回るところ)定住し歩き回る。これが牧口の言う郷土論にあたり、この多様性については「関係の多様性」であって具体相の一つとして「種の多様性」がある。

第4章、人類共和の大切さ

人間生活の絶対的基盤を築く

牧口は反帝国主義こそ「人道主義、人間主義」とした。

戸田先生は1,957年(昭和32年)原水爆禁止宣言でその使用者は死刑にせよとまで世界に先駆けて勇気ある宣言をされたのである。

人道的競争から競走の時代へ

“孤高の闘い”として「一人立つ精神」を自覚的に堅持していなければとんだマインドコントロールに陥ってしまう。

日本人の精神風土として国家権力が直接出動する前に、あくまでも国民の自発、志願というタテマエでの強制が幅を利かせ猛威をふるう土地柄だ。

・この時期にこんなことをすると世間が何というか。

・お心のままにと云うけれど、とても嫌とは言えない。

自己を規制し、同志が相互に規制し合う。ソフト支配の仕組みに取り組まれたことで権力行使を補完するといった精神風土、島国根性

しかも日本のメディア特にマスコミの地位向上が意識的に世論を形成し操作しようとさえしていると感じられる昨今。いじめと隠し立てまで行ってつまり作為、不作為両面での悪行はあとを絶たない現状。

オウム真理教、坂本弁護士一家殺害事件における真相、地下鉄サリン事件の後もTBSは口を閉ざしてきた。そして他のマスコミもそれらを糾弾してこなかった。こと組織、機構、番組制作の外注等の問題へと逃げ込ませて被害を大きくしてきた。日本の一般の平和思想は国際紛争の局外にいようとする。「戦争には巻き込まれてはいけない」という発想である。国際関係、世界政治を国民からは手の届かない遠い世界の出来事とし自らの無力を嘆きつつ傍観するといった情景。しかも過去における台湾や朝鮮の統治政策は文化、文明をもたらした善政であったと思っている人が少なくないようである。昨今では、米国順応主義をとる日本政府の姿勢(アメリカを通してしか世界を見ない)を世論は支持し容認してきた結果、国際社会からは理解不能として、日本は金を出すしか能力なしとレッテルを貼られ、“せめて金を出せ”となる。そうしたことが重なって軍事的協力へと短絡化する上に、アジア諸国への戦争責任を認める事も屈辱外交に想えてくるという危険性を孕んでいる。

いざとなると安全地帯に逃避できる支配階級や上流階級とは違う庶民こそが平和擁護の担い手なのだという認識が牧口のこの人生地理学の文底からは汲み取れる。そして現在国際親善と緊張緩和を実施できる民間団体が必要となってきて、その典型として創価学会、SGIの存在は欠かせないのである。自分たちのメディア(衛生同時放送網)を持ちマスコミの操作で汚染される事なく一人を大切にを合言葉に一人立つ精神を受け継ぎ前進を開始している。ただ沖縄の人々の基地問題に係わる心のあり様は理解に苦しむところである。過去における沖縄戦での苦い経験を思い起こしてほしい。軍隊と云うものは、国防の名のもとに身内さえも見殺しにする。

第5章、美、利、善の三価値と人間主義

・利の価値は善によって支えられてこそ成り立つ。

社会生活の基礎としての経済活動(実業)~流通革命

物欲と性欲(セックス)を弁証法的に肯定した日蓮大聖人

「煩悩即菩提」「生死即涅槃」

古今東西の道徳、宗教のほとんどは、営利活動である経済行為をセックスとともに悪徳、悪行として否定してきた。だがキレイごとの裏面に生臭いホンネと偽善を生んできた。だから悪行化、偽善性は僧侶、神職において最も甚だしい。小善大悪、悪人成仏といった逆説的な真理

・美の価値論(風致、景観論として);厳正自然保護と林業との関係

第6章、山もまた有情物~牧口と山林との出会い

人間と自然を媒介とする者もの ~ 依正不二論としての山

  • 山の高度と人生~高度と水源、山と文化
  • 山の各部と人生~急傾斜地利用、付加価値生産を高める本物、自然

山との交情が愛国心強いては国粋心を育む。

封建時代における島国根性が危険思想ともなる。そこで牧口は感性を悟性の上に置く価値観の逆転を行った。

いわゆる常識批判というに近い形のものとなりましょうと廣松渉氏は指摘。

・森林機能論

森林と漁業 ~ “木に縁りて魚を求める”

森林と農業 ~  木材栽培、農業的林業

・森林五機能

1、生産機能

2、埋木浄水機能 ~ 水量、水質浄化

3、防災機能   ~ 雪崩防止機能

4、環境形成機能

5、レクリエーション機能 ~ 保健林業

木材の再評価 ~ 再生可能な資源、森の文明、木の文化

昔、木材が使用されていて今では石油や金属に代替されている分野を奪還。将来において木材の産出に富んだ国が先進国とされる。

・森林と結び合う焼畑農業[造林]形成過程

  •  地拵え ~ 防火帯を造る
  •  火入れ ~ 七月(後半)から八月(前半)
  •  夜開始、朝方に終了 ~ 夜風は弱く朝方に風が吹く、涼しい
  •  上から下へ向けてゆっくりと横一線で燃やしていく
  •  灰がまだ熱いうちに種を蒔く

第一年度 ~赤カブ大根ソバ白菜、秋に苗木そして薬草類、コウゾ、ミツマタ

第二年度 ~ 大豆、小豆、スイカ、馬鈴薯(春)

第三年度 ~ 小豆、イチゴ

農作物の作付は三~四年とし、林木と雑草との競争の置き換え下刈(除草)期間に相当する。

・完全給食主義農業の盲点

1、植物の必須元素は16種(植物には60種の元素保有)

2、過保護、栄養過多かつ栄養失調の虚弱児、成人病患者

呼吸根が委縮(努力しなくなる)

・温室効果ガスの原因

二酸化炭素だけではなく、メタン等の窒素化合物も原因。

有機農業、畜産業の排出ガスも起因とされる。(農業環境による腐植質説)

・都市部から農村部へ

弱者(過疎、高齢化、福祉切り捨て、増税)、地域の活性化

以上 要旨記述 2019/12/02

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