出口治明 著
はじめに~なぜ今、哲学と宗教なのか
- 今、哲学と宗教を学ぶ理由
《昔から、人間が繰り返してきた問い》
テロの横行、難民問題さらにインターネット社会の到来がもたらした他者への誹謗中傷が、人間に対する偏見と憎悪を増幅させている。又、歴史的事実として哲学と宗教は不即不離の関係にあり、これらの流れを大きく理解することは間違いなくビジネスの世界に役立つと思うのです。
神という概念が生まれたのは約1万2千年前、それ以来人間の脳は進化してないようです。BC1,000年前後にゾロアスター(ペルシャ)・BC624年頃タレス(ギリシャ)それから2,500年数多くの哲学者、宗教家達が登場。
それぞれの時代において彼らがどのような悩みに対し、どのように生き抜いたのかを感じ取ってほしい。ソクラテス、プラトン、デカルトも、ブッタ、孔子、も同じ血の通った人間で、隣人です。彼らの生き方を通して人生の糧としてほしいと願う。
- ところで哲学とは?宗教とは?
《原初から人間が抱いていた二つの問い》
- 世界はどうしてできたのか。~又、世界は何で出来ているのか?
- 人間はどこからきてどこへ行くのか。又、何のために生きているのか?
哲学と宗教、その定義づけについて「叡知への愛・知識の探究・特に自然現象の原因・宇宙の事実と真実・さらに存在することの意味などに関わる知識追及を愛する事」超自然的な支配力、宇宙の創造者や支配者(神)の存在を信じること、それらは人間が死んでも肉体は亡びることなく存在し続ける霊的な本性(霊魂)を人間に与えてくれる。
- 宗教、哲学、そして自然科学が解き明かしてきた事
最初に宗教があり、次に哲学そして自然科学が回答してきた。
ビックバーンによる宇宙の誕生~星の欠片から地球やがて生命が誕生し人間が生まれてきたとされている。約20万年前「ホモサピエンス」から尚これから10億年くらいしたら、地球から水分がなくなり全生物は死滅するだろうと言われている。何のために生きているのか(次世代に残すため)・人間とは何か(脳の働きに依存している動物)
- 自然科学の発達は、宗教や哲学を無用にするだろうか?
そうでもなさそうだ。遺伝子は個性や能力の継承を保証するものではない。
- 宗教が誕生するまで
- 人間は、考えるために言葉を身につけた。
10万年前に出アフリカの前後に言語をもたらしたという学説が有力である。
- 時間について(古代エジプト)
太陽暦(夏至から冬至へ向かって太陽が輝く)~一年周期(365、24日)
一日の周期(夜空の月が新月から満月そして細く欠けていく、月が地球を一周するおよそ29、53回)一日と一年、一か月という概念を身に着けた。
- 人間の突然の変化、ドメステイケーションと宗教の関係
「飼育、順応、変化」~動物は家畜化、植物は栽培化
狩猟、採集生活から、農耕牧畜生活への転換(定住化)により、人間は宗教という概念を考え出した
- ゾロアスター教がその後の宗教に残したこと
(古代ペルシャ発祥)
1踊る宗教家マニの登場との関係
2「善悪二元論」と「最後の審判」
3守護霊と洗礼~祖霊信仰の始まり
4火を祀ること
5ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教はゾロアスター教から多くを学んだ。
6ニーチエの「ツアラトウストラはこう言った」とゾロアスター教との関係
「永劫回帰」思想~「輪廻転生」の思想関係
- 哲学の誕生、それは知の爆発から始まった
BC5世紀前後、温暖化が始まり、農作物の生産が急上昇(貧富の格差が拡大)
有産階級が生まれたことで、知識人や芸術家が登場、そして知の爆発。
「世界は何で出来ているのか?」
- タレス(哲学の祖)と自然哲学者が考えた「アルケー」とは
ギリシャ神話の世界(エーゲ文明)・ロゴス(言葉)~アルケー(万物の根源)
この世のアルケーは何か。答えは「水」
・ヘラクレイトス~「万物は流転する」~アリストテレス(火、空気、水、土)
「地、水、火、風」の4元素説
デモクリトスはアトム(原子)・ピタゴラスは「数」数学の定理
- ギリシャ以外での「知」の爆発
インドのブッダ他「六師外道」・中国の「陰陽五行説」
- ソクラテス、プラトン、アリストテレス
ソクラテス~人間は、何を知っているのか「不知の自覚」~外面から内面へ
- ソクラテス時代のアテナイ
BC5世期「軍事国家」スパルタと「民主国家」アテナイという強力な都市国家形成後に両国間で覇権闘争へ「スパルタ」の勝利
- ソクラテスの実像と虚像
ソクラテスの弁証法(対話弁説)~「不知の自覚」
論破された逆恨みから憎悪を抱いた人々は、ソクラテスを告訴、死刑が確定
対話が中心で何も書き残さなかった。プラトンら彼の弟子たちが残した文献が主で特にプラトンによるものに依拠している。
*ソフイスト(詭弁屋)プロタゴラスの「人間は万物の尺度である」
何が正しいかは人それぞれ異なるという論理。
- 西洋哲学におけるプラトンの位置づけ
「哲人政治」~国家、法律などの著作で述べた政治形態の一つである。
当時のアテナイにおける政治形態として、寡頭政や民主政を志向してもスパルタの連中にいいようにされ、アテナイにとっては良くない。
そこで哲人政治への思考となったのではないか。
「イデア論」~二元論~輪廻転生思想(魂は不滅、何度も生まれ変わる)
- アリストテレス「万学の祖」
天を指すプラトンの観念論と大地を指すアリストテレスの経験論
アリストテレスは地面に足がついてないから駄目だ。
プラトンはいや天を見よ天上界にイデアがあるのだ、この世はその模像だ
中庸を説いた倫理学~ただ生きるのではなく、よく生きることが大切。
ソクラテスは人間の内面、プラトンは哲学の問題を提起した。
「人はどうすれば幸福に生きられるのか」
- 孔子、墨子、ブッダ、マハービーラ
- 春秋・戦国時代、中国の動乱期を生きて思索し行動した
中国最古の王朝は商(殷)その後は周(武王)~封建体制
有力な諸侯(覇者)達によって維持されていた時代
- 孔子は「礼」「仁」の復活、「周公旦の時代に帰れ」「朋あり遠方より来る、亦楽しからずや」論語
- この時代孔子を否定はしなかったが重用もしなかった。
他人への思いやり、慈しみの心、(人道主義)
- 孔子とプラトンの類似点
プラトンは哲人政治、孔子は聖人君主を重んじた(儒教)。現在も中国共産党が「儒教社会主義」を掲げて権力者に重用され続けている。
- 墨子は孔子を批判
「非攻」思想(戦争反対)と「節葬」~幸福度指数を持った思想家
高度成長に伴う自然災害を危惧していた。
- 彼らが中国の戦国時代に姿を消した理由
「清く、正しく、貧しく生きよ」といった少数派集団は、世間受けはいいのだが世の中は少しもよくならずどちらかと云えばどうしても反体制的な考え方に(反主流派)。秦の始皇帝時代に反対性理論として消滅した。
- バラモン教にストップをかけたブッダとマハービラ
バラモンのカースト(身分制度)「出家」仏教徒として(不殺生」を主張」
バラモン教が都市部から地方へ移り、土俗的なヒンズー教として大発展
現在インドでは、牛が聖獣とされている。
- 輪廻転生の苦しみから逃れる方法をブッダとマハービラは説いた
・ブッダの「八正道」~極端な修行を否定」日々の生活の中で正しい行いを持続することの難しさに耐えて持続する事の人格の達成を教えた。「寛容の精神」
・マハービラは、苦行とめい想に重点を置き「不殺生」を主張(ジャイナ教)
「断食」~動物も植物も食べない行とする。ガンジーの「偉大な魂」に影響
第6章、(1)
1、ヘレニズム時代にギリシャ哲学や宗教はどのような変化を遂げたか
東西文化の融合時代、コスモポリタン(世界市民)平等意識が芽生えた時代。
アレクサンドロス大王の東征
2、エピクロスの快楽主義~禁欲生活・心の平静(激情、情熱、情念からの解放)
3、ゼノン(ストア派)の理想の人生とは
「徳」の追求(知恵、勇気、正義、節制)悪徳と戦う事
人間にはロゴス(理性)が備わっている。自らの運命を認め、受け止めなおも積極的に生きよという考え方。
・ストア派とプロテスタント(カルバン派)の類似点
カルバン派の人々は、神を裏切ることは許されないとして、誠実に世のため人のために生きて天国に行くという強い誇りを持っていた。
一方ストア派のローマ帝国のエリートたちも選ばれし者として立派に生き
両者の志はよく似ていた。ところで、エピクロス派の哲学は唯物史観ですから定められた運命に従うということには悲観的ですから、死んだら何も残らない、なぜ一生懸命に働かなければならないのか。そこで隠れて生きよとなります。庶民的な人々の支持を集めたのでしょう。
・唯物論について
現代の脳科学に基礎を置く唯物論では意識とは脳髄(物質)の所産、認識とは脳髄による反映とし物質から離れた霊魂や精神意識の存在を認めない。
第6章、(2)
ヘレニズム時代中国には諸子百家(インテリ集団)の全盛期が訪れた。
- 陰陽家の特殊な位置
- 性善説(孟子)と性悪説(荀子)
教育に大切なことは、個人の主体的努力に任せるか、社会システムとして教育の場を制度化するかの論争と捉える。
- 孟子の「易姓革命論」「井田制」
「天命が下る」~下剋上(武力による王朝打倒) 日本の天皇家には姓がない。姓がなければ「易姓革命」は起こりえない。
・ルソーの社会契約説(王道と覇道)と似ている。~キリスト教に説く神と人間が契約を結ぶという教えは否定されている。
「井田制」(孟子)~公地公民制度の原点
一里四方(400米×400米)9等分して真中の土地を共有地として税を掛ける。
4、「荀子」は何を考えたのか
「青は藍より出でて、藍より青し」「出藍の誉れ」~弟子や生徒が師匠を越えて優れている。
- 韓非(法治主義)と荘子(無為自然)~老荘思想(道家)
俗世間を無視して自由に生きる。
- 需家、法家、道家の存在が中国社会に安定をもたらした。
中央集権国家(法治国家)にあって、民衆は儒教に従い、先祖、親、家族を大切にし、無法者は法に従って裁かれる。法家や儒家はまじめすぎてバカバカしいからと知識階級の者たちにとっては道家の老荘思想があって、共存可能な思想の住み分けができた。仏教は民衆向けの浄土教とインテリ向けの禅が中国社会に根を下ろし、是が日本にも導入され「百家争鳴」を生んだ。
第6章(3)
ヘレニズムにユダヤ教が始まった。(旧約聖書の完成)
- 旧約聖書の成立(選民思想)~「誇りを持て、我等は選民なのだ」
ユダヤの民のアイデンティティをなくしたらあかんという思い。帰郷しない同胞にアピール(エルサレムへの帰郷)バビロンに捕囚されていた同胞へのアピールとして成立した聖書~タルムードという口伝の律法
- 仏教教団が分裂~上座部と大衆部;お金をもらうべきか否かの論争
原始仏教では個人修行(托鉢)~財や妻子は出家時に捨てるべきで無税
第6章(4)
ギリシャ王が仏教徒になった。~「ミリンダ王の問い」はギリシャ哲学と仏教思想(上座部)の接触でした。ミリンダ王は仏教の輪廻観や業(カルマ)善悪観等に興味を持ち仏教徒になった。ギリシャ人のミリンダ王はプラトンやアリストテレスの哲学者の学説について知見をもっていたはずです。
アレクサンドロス大王の死後BC3世紀頃バクトリア王国がギリシャ人の手によって独立(インドではミリンダと呼ぶ)
ギリシャ人が積極的に世界に進出(グローバリゼーションをあの時代に実現させ)ポリスが空っぽになった時代でもあった。
・中国の清、漢帝国、唐、宋、ペルシャ、イスラームの大帝国インドの諸王朝やモンゴル帝国といった東洋よりも西方の文明を高く評価するという考え方。事実は真逆だったのですが19世紀に生まれたこの西洋は先進的で東洋は後進的だとする西洋史観を基本とする世界史の考え方は是正すべきである。
第7章、キリスト教と大乗仏教の誕生とその展開
・宗教人口の内訳
キリスト教徒32、9%(24,5億人)イスラーム教徒23、6%17、5億人
ヒンズー教徒13、7%(10、2億人)仏教徒7%(5、2億人)
- 新約聖書成立まで
イエス・キリスト以前の預言者と神との契約を旧約聖書と呼び、イエスが語ったとする言葉や奇跡を弟子たちが書き残したものを新約聖書とする。
・イエスの教えとパウロの教え
神は天地万物の創造の主、人間はエデンの園で楽しく暮らしていたが神の教えを守らず禁断の智慧の実を食べて原罪を負ったイエスは全人類に代わって十字架にかかり刑死した後に復活した。イエスこそが全人類の救世主メシア(キリスト)である。イエスの物語とパウロによる(創作)の物語である。
「共観福音書」マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、トマスによる福音書。
・グノーシス主義(異端思想)~肉体、物質が悪で魂、精神を善とする
- 初期のキリスト教が、認識という意味で展開してきた見事な布教戦術
ローマでキリスト教を布教した人たちは、イエスの誕生日を冬至の頃に定めクリスマスとした。《12月25日は4世紀頃》
イエスを抱く歳暮マリア像をつくり、イエスの顔つきは大神ゼウスに似せた。
ユーラシア大陸の天候不順(寒冷化)が東のモンゴルから西のローマ帝国へと南下、イエスの最後の審判で天国に行けるという教えは民衆の心に響いた。
- キリスト教会の三位一体説(公会議の召集)~最高会議
- 三位一体説に含まれる複雑な論点
ヨゼフとマリア~マリアの妊娠について(神の聖霊)であると告げられる夢の中で、イエスの誕生を迎える。彼は人類の罪を救わんがために生まれてくる。
・司祭アリウスが「イエス」は「人の子であると説く」
父なる神と子なるイエスと聖霊この三つの位格は全て一体で神である。
・5大教会
コンスタンチノーブル教会(総主教)
アンテイオキア教会~シリア
エルサレム教会
アレクサンドリア教会~教皇
ローマ教会~教皇
*三位一体説「父と子と聖霊の御名において、アーメン」
信仰の世界の出来事に世俗的な社会の事実関係を当てはめることの愚劣さを無意識に犯すことになる。
- キリスト教が東西に分裂する
東の東方教会と西のローマ教会に分裂
- ブツダとは無縁の大乗仏教が登場した
大衆をターゲットにしたヒンズー教に対抗する形で、大勢の人が乗れる教えをこれからの仏教とする。個人の悟りの教えから、迷える人々を救おうという発想の転換であった。後に仏像をギリシャ彫刻を手本とした。
7、「教父哲学の人」アウグステイヌス
教父とは神学者、聖職者~教会の権力を世俗権力の上位に置く考え方。
キリスト教の論理を教化するためにギリシャ哲学を利用。
アウグステイヌスの「告白」の中で言及された自由意志のこと。
キリスト教を信じ神の恵みを受け初めて人間としての自由意志を得ることが可能となる。帰依して信心を得ることで、人生の苦悩から自由を得ることが出来る。ルネサンスから宗教改革の時代にかけて哲学、宗教の大きな問題。
第8章(1)イスラーム教とは?誕生、発展、挫折の歴史
1、ムハマンドは普通の人(商人、市長、軍人)
最後の預言者、経典は単純明快、コーラン
2、専従者(司祭、僧)がいない。信仰の形「六信五行」モスクの管理は自治体NOPが行う。神はアッラーフ
信仰告白(入信)礼拝(5回)、喜捨、断食(ラマンダ9月)巡礼
- ムハマンドが開祖となったイスラーム教の合理性~商人、普通の人
- 偶像崇拝の禁止とキブラ礼拝、コーラン
- シーア派とスンナ派~単なる派閥争い~ほとんどが、西欧諸国からの石油利権をめぐる争い事
- ジハードに対する誤解~テロ行為をジハードと呼ぶが、本来の意味は、立派な人間として奮闘努力する事であって「聖戦」と翻訳されているが、寛容と慈悲を大切にする生き方。商業という人の和を尊ぶ宗教
- 4人の妻を持つ意味~戦乱の世にあって、兵士の死亡によって4人までの妻帯を認めた。モーゼ、イエス、ブッダらの教えにしても、彼らが生きた時代背景の中で良かれと思って説かれたものであって、現代のモラルを尺度として批判するだけでは無責任です。
- イスラーム原理主義とユースバルジの問題
産業革命、国民国家という二大イノベーションに乗り遅れたIS
ユースバルジ(若者が増える)~政情の不安定さと経済の低迷からくる中東の人口増加。働く場がない状況でお金がない遊ぶ機会が少ないそこに絶望してテロに走る。テロとイスラーム教を表裏一体に考えるのは極端すぎる。
- キリスト教徒とイスラーム教の誕生には、約600年の時間差がある。
イスラーム教では、利子は取りません。世俗化していません。将来どうなるかキリスト教のように世俗化するのかどうか。
第8章(2)
イスラーム教には、ギリシャ哲学を継承し、発展させた歴史がある。
神学(アッラーフ)唯神に哲学理論(プラトン、アリストテレスら)を神の存在を前提にして神学に応用した。空中浮遊人間説などは、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」近代的自我
第8章(3)
イスラーム神学とトマス・アクイナスのキリスト教進学との関係
- スコラ学(キリスト教の学問)~スクールが生まれた
11世紀末、ボロ-ニヤ大学12世紀にパリ大学リベラルアーツ(教養学科)
「哲学は神学の端女」と喝破したトマス・アクイナス
理性によってプラトンやアリストテレスに代表される哲学が生まれた。
死後の世界や宇宙の事も解らない。これらを説明するのが神学、信仰の真理によって構築される。
- 12世紀のルネサンスのこと
イスラーム世界からギリシャ、ローマの古典がヨーロッパに里帰りした時代を12世紀ルネサンスと呼ぶ。西ヨーロッパでは騎士道文化。温暖化による農作業の進歩、文化活動を高めやがて14世紀に訪れるイタリアルネサンスの大波に繋がる第一波であった。
第8章(4)仏教と儒教の変遷
1、密教(秘密儀則)~仏教誕生のインドにはなく大日経(宇宙を統る大日如来)が日本、中国、チベットで栄え上座仏教が東南アジア(タイ、カンボジア、ミャンマー)その東南アジアは最もイスラ―ム教徒の多い地域です。
2、イデオロギー化した儒教(朱子学と陽明学)
第9章ルネサンスと宗教改革を経て哲学は近代合理性の世界へ
1、ルネサンスの哲学的な収穫は?
ルネサンス(再生)、ペスト(ヨーロッパ人口の三分の一死滅)
「死生観」死を想えとする考え方、きちんと生きよ、神にすがる生き方と人生を楽しもうよ~神の手から解放しよう。デカメロンのボッカチヨに見る如く神への恐れや敬虔の姿勢はほとんど出てきません。レオナルド・ダビンチ
マキャベリ(君主論)
2、快楽について」~精神的愛、性愛、人間の肉体は美しい、ビーナスの誕生
・寛容の精神」モンテーニュ~人間性の復活
17世紀フランスに数多くのモラリストたちが登場。
パスカル(人間は考える葦である)
3、スペインによる新大陸発見~アンデス山脈での銀の発掘(現地人を酷使)
4、ルターとカルバンの宗教改革~ルターの問題提起を起因としてローマ教会を批判。聖教者たちの贅沢や堕落を追及~プロテスタント(新教)
・カルバンの改革(予定説)、マックス・ウエバーの資本主義精神
5、ローマ教会の対抗策
イエズス会(イエスの軍隊)~フランシスコ・ザビエル
6、哲学は合理性の世界へ信仰上位の世界から合理性と自然科学への世界へ
フランシス・ベーコンという思想家「(知識)は力なり」ガリレオ・ガリレ
イ、ヨハネス・ケプラーの地動説
・人間の4つのイドラ(アイドル)
- 種族のイドラ~偏見や対象を都合のいい方向に考えたがる性向を持つ。
いやなことは過小評価し楽しいことは過大評価、見たいものしか見ない。
- 洞窟のイドラ~経験に左右されて見方が歪むケース、「井の中の蛙」
- 市場のイドラ~伝聞による(週刊誌の記事に踊らされるケース)
- 劇場のイドラー~権威のイドラ、舞台で有名なタレントが話した事や権威ある宗教家が説教したことを何の疑いもなく信じてしまうケース
・自由主義、民主主義の父ジョン・ロック
「社会契約説」「寛容についての手紙」~政教分離の原典、万有引力の法則
- 大陸合理論の哲学とは?
演繹法(デカルト、スピノザ、ライプニッツ)
「方法序説」疑っても疑いきれないもの、自分の存在こそが絶対的真理
*不完全な人間が完全を求めるのは、完全を知る神の存在があるからだ。
生得観念として誠実で正しいもの、完全なものを教えてくれた。
・デカルトの心身二元論に疑義を表明したスピノザの一元論
ライプニッツの多元論、ルソーの「一般意志」
第10章、近代から現代へ
世界初の人工国家の誕生へ~ルネサンスと宗教改革により、中世は終わる。
アメリカの独立(1,776年)・フランス革命(1789年)・ナポレオン法典(1,804年)ヨーロッパ革命(1848年)~アメリカは憲法を拠り所として、自由、平等、友愛精神は、フランス革命に火をつけ、ナポレオン法典としてヨーロッパを統一した。フランスは共和国として第二の人工国家となった。
「想像の共同体」は国民国家の構造を解き明かした。
・保守と革新という二大イデオロギー
トマス・ペイン(人間の権利・コモンセンス)
エドマンド・パーク(保守主義・フランス革命の省察)
アダム・スミス(自由放任主義・国富論)
ナポレオン(ナポレオン法典・所有権)
・中世以降のヨーロッパ哲学の流れは、地上よりも神の国を上位に置いた。
ルネサンスにより諸説入り乱れ、デカルトの自我の確立に至る大陸合意論の潮流。一方イングラントにおいて、経験論というジャンルを打ち立てドイツではイマヌエル・カントが登場し大陸合理論と経験論を統合しようとした。
人間には二つの認識の方法がある。感性と悟性(知性)彼は純粋理性批判の中で、「対象は認識によって決定される」とコペルニクス的転回(地動説)によってこれまでの「認識は対象に従って決定される」という概念を変革
・二律背反~形 上学的問題(宇宙、時間)は理性の限界として信仰の問題であると指摘した。尚批判には「区別する、識別する」という意味がある。
自然界には自然法則があり、人間界には道徳法則がある。事物を認識するのは頭脳の仕事(純粋理性の役割)道徳法則は人の行為(実践)に関する事なので実践理性とする。純粋理性に悟性があるように実戦理性には格率」(信念)があり、目的の王国を実現する。人間は自分の生き方に信念を持っている。
「威張るやつは嫌いだ・弱い者いじめはいけない」といったように。
自律」自らの思想を深め権力、人権、心理など日々新たに学ぶことで道徳法則についてもよく分かってくる。このような自律した人間の事を人格と呼びこのような人が集まれば理想とする社会(目的の王国)となる。
- ヘーゲルの弁証法(絶対精神)をどのように理解すればよいか
「正反合」という概念~道徳と法律を結びつけた理論(全体主義)
・ビスマルク(社会保険制度の生みの親)
・ベンサムの最大多数の最大幸福」(功利主義)
・大河内一男(東大総長)の太った豚より、痩せたソクラテスになれ」
(満足した愚者よりも不満足なソクラテス)
・ジョン・スチュアート・ミル~量的快楽より、質的快楽
・ショーペンハウアーはへーゲル思想を批判~ペシミズム(厭世主義)
本質は弁証法による進歩主義に対するアンチテーゼであった。
第11章、ヘーゲルのあと3人の哲学者が形成した19世紀の終わり
- キルケゴール(実存主義者)~全体的な進歩ではなく主体的な実存の在り方を強調した。①美的実在②倫理的実在(ボランテイア、人のため)③宗教的実在~「ヘーゲルの絶対的精神を否定する。そんなものより自分の平和が欲しい」と
- マルクスは絶対的精神を「生産力」という概念に置き換えた。
進歩させるものは物質である。それは経済構造が生み出す生産力である。社会の構造を土台(下部構造)の上に上部構造(政治、法性、イデオロギー)が乗る形で存在している。唯物史観の誕生です。
封建制から資本主義、次に社会主義化して共産主義へと歴史は進む。
資本主義は労働を疎外する。土地、資本、労働によって生み出される付加価値を高めることで生産手段を高めることができる、そこに搾取が生じる。
プロレタリアート(労働者)の労働疎外を防止するために生産手段公有化という理論を確立します。しかしそこには階級闘争が起こりますが、労働者が勝利すれば公有化され社会主義化されて共産主義の世界になる共産党宣言
・ダーウインの進化論、自然淘汰説~種の起源(神の存在を否定)
3、ニーチエは「神は死んだ」と言い切った。(実存主義)「超人思想」
歴史は進歩するという考え方と進歩しないとする考え方この二つの捉え方
歴史は永劫回帰しているのであって進歩しない。宗教のように絶対者に頼るか、それとも自分自身の力で生き抜くのかどう生きるかだ。
4、フロイトの精神分析学~無意識の発見
脳の働きの90%以上がこの無意識~頭で考える意識(理性)哲学
生の本能(エロス)死の本能(タナトス)という概念
・ユングとアドラー~心理学
第12章、20世紀の思想界(宗教・哲学)
分断の時代であったが又、統合を目指した時代
- 言語は記号であると考えたソシュール
存在が世界を規定しているのではなく、言語が世界を規定しているのだ。
2、「現象学的還元」フッサール
判断の留保(エポケー)~軽率に判断するな留保せよ
自分には自我がある。他人には他我がある。自我と他我が同一と認めるなら、人間の実在を確信できる。
- ウイトゲン・シュタイン「言語論的転回」
言語のは二つの性格=日常的言語と科学的言語
語りえぬものについて人は沈黙しなければならない。認識しえないことについて興味がなかった。語らない。神とは何か、歴史とは何かなどについて抽象的に考えることではなくそれぞれの民族や文化の中で生きてきた人間が、神とか歴史とかいう言葉をどういう意味で使っていたのかそれを分析するのが哲学への課題である。
- サルトルの実存主義~実存は本質に先立つ」
パリの学生運動、日本の全学連による全共闘運動にも影響
- レビィ=ストロースの構造主義~サルトルを否定
科学的思考と野生の思考~社会の構造が人間意識を作る、完全な人間なんていない。世界は人間なしに始まったし人間なしで終わるだろう」
・人間はどうして生まれたのか?どこからきて、どこへいくのか?そして何のために生きているのか?~すべては哲学と宗教への課題である。
・おわりに
2045年にシンギュラリテイ(異常性)の時代がやってくる。
AIとは何か?~自動車や飛行機と同じように機械として利用すればいい。
未だ解っていない脳の仕組みをAIに置き換えることはかなり難しい。
宇宙飛行士は宇宙で何を思ったか。新興宗教が誕生するのはなぜなのでしょうか。哲学も宗教も人間が生きていくための智慧を探し出すことから出発した。神の存在を考え出した人間が、神に支配され次に自由を取り戻し、そして今科学に支配される時代を迎えています。冷酷な運命を受け止め、それを受け入れなおかつ積極的に頑張るぞと考える人たちが存在する。
以上