マネジメント(基本と原則)

一般書籍

PF・ドラッカー著

上田敦生編訳

・日本の読者へ

1、マネジメントには、「基本と原則」とすべきものがある

2、それぞれの企業、政府機関、NPOのおかれた国文化、状況に応じて適用

3、「しかし」~基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する。

*今直面する問題は何か。適用すべき基本と原則は何か。自らの前にある機会と挑戦は何か。適用すべき基本と原則は何か。自らの拠り所、指針とすべき基本と原則は何かを考えて頂きたい。

・まえがき ~なぜ組織が必要なのか

組織をして、高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策で一ある。その組織に成果をあげさせるものが、マネジメントであり、マネージャーの力である。成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義に変わるものであり我々を全体主義から守る唯一の手だてである。

本書は、マネジメントの使命、目的、役割から入る。外から見、その課題にいかなる次元があり、何が要求されるかを見る。マネジメントのための組織と、仕事をみる。さらにトップマネジメントと戦略を見る。個々の組織の存続や繁栄よりもはるかに多くのことがその成果如何にかかっている。

~本書の動機と目的は今日と明日のマネジメントをして「成果」をあげさせることにある。

・序 新たな挑戦 ~現代社会の命運を握るもの

現代社会の機能がそれら組織の仕事ぶりにかかっている。この新たな多元社会のための理論はまだない。組織社会は今日われわれの社会観、政治観、あるいは社会観を支配している理論では説明できない。(マネジメントを内から見ている限りにおいては)新しい現実のための理論が生まれるには、時間がかかる。だが待っている余欲はないたとえ十分ではなくともすでに明らかになったものを使って行動しなければならない。

・マネジメントなしに組織はない

組織が機能するには、マネジメントが成果をあげなければならない。組織がなければマネジメントもないマネジメントがなければ組織もない。

・マネジメントブームは去った。

・新しいニーズの出現

既存のものの最適化に加えて新しいものの創造に関わらなければならなくなっている。

1、企業以外の組織をマネジメントし、しかも成果をあげさせることである。

2、これからの課題は、知識労働者である。肉体労働者は過去のものである。

3、全世界は、需要、欲求、価値、の観点からは一つのショッピングセンターになっている。(グローバル化している)先進社会と途上国社会との違いは、供給能力の差だけである。

最も重大な変化が社会の願望、価値、存続そのものがマネジメントの成果、能力、意志、価値観に依存するようになったことである。

Part1マネジメントの使命

組織の機関である。組織とは祉会的な機能を果たし社会に貢献するための機関である。

1、マネジメントの役割

①自らの組織に特有の使命を果たすために存在する。

②仕事を通じて働く人たちを生かす。生計の糧、社会的地位、コミニュテイとの絆を通し、自己実現を図る

③社会の問題に貢献する

*管理的活動と起業家的活動

起業家とならなければならない。

昨日を捨て明日を創造しなければならない。

既に存在しているもの、知られているものを陳腐化しなければならない。

成果をあげること、人を生かすこと、社会に及ぼす影響を処理するとともに社会に貢献する事

~そして社会が関心を持つのは結果である。

それらのものは、果たすべき役割によって、決定されるべきものである。

第1章 企業の成果

綜合的な経営科学、真の企業理論というべきものも持たない。だが企業とは何であり、その目的がなんであるかは知っている。

2、企業とは何か ~企業:=営利組織ではない

利潤動機は意味がない~目的ではなく条件である。

的外れであるだけでなく害を与えている利益の本質に対する誤解と根深い敵意が生じている。

しかし企業は高い利益を上げて、初めて社会貢献を果たすことが出来る。

・企業の目的

定義は一つしかない「顧客」を創造することである。有効需要に変えられて初めて顧客と市場が誕生する。マーケティングとイノベーション(革新)という二つだけの基本的な機能を持つ。これらが成果をもたらす。消費者運動が企業に要求しているものこそマーケティングである。”我々は何を売りたいかではなく「顧客は何を買いたいか」「顧客が価値ありとし必要とし求めている満足がこれである。

我々の製品やサービスにできることはこれであるではなく、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせおのずから売れるようにすることである”

・イノベーション(革新) ~新しい満足を生み出すことである

手数料貰うだけのブローカーか何の価値を生まない投機家ではなく成長する経済のみである。企業こそこの成長と変化のための機関である。

・利益の持つ機能とは~利益とは原因ではなく結果である。

マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするもので、リスクに対する保険、より良い労働環境を生むための原資、社会的サービスと満足をもたらす原資、つまり成果の判定基準なり。企業人は利益についての弁解は必要なし弁解の必要を感ずるべきは利益を生むことができなくなることである。

3、事業とは何か

顧客は誰か(常に一種類ではない)、どこにいるのか、何を買うのか。

成功にけちをつけることは好まない。だが(せいぜい10年、波に乗っているだけの企業は波とともに衰退するものだ)

4、事業の目標

それ以上大きくなると賢明ではないという上限もある。

市場を支配すると惰眠を貧り自己満足で失敗する。組織内に革新に対する抵抗が出てくる。外部の変化に適応が危険なまでに難しくなる。

・三種類のイノベーション

①製品とサービスにおける②市場における消費者行動と価値観における

③製品を市場に持ち込むまでのイノベーション

・経営資源の目標 ~①土地②人材(労働)③資本(資金)

*目標は実行に移さねば目標ではない。夢に過ぎない。我々の事業は何か、何になるか、何であるべきか

5、戦略計画

①思考、分析、想像、判断の適用~手法ではなく責任

②予測ではない(未来は予見できない)

③明日何ができるかではなく不確実な明日のために今日何をなすべきか

④本質はリスクを冒すことである

~リスクをなくすためのものではなく最小にするものでもない得るべき成果と比較して冒すべきリスクというものが必要である。より大きなリスクを負担できるようにすることである。成果は組織の中の主な人材をわりあてることで決まる。

・「今日この仕事のために、最高の部下のうちだれを任命するか」

責任をもって行うか、無責任に行うかだけである。そこにはリスクを伴うか伴いたくないかは、問題ではない。(成果と成功についての妥当な可能性を考慮に入れつつ)

第2章、公的機関の成果

その成長と重要さに伴う成果をあげていない不振の原因は何か。成果をあげる上で必要なものはないか。

6、多元社会の到来

7、公的機関不振の原因

公的機関こそ成長部門(多元社会である)~企業内ではサービス部門であるあらゆる国において官僚主義への不満が高まっている。貢献と成果の為ではなく、そこにいる者のために、マネジメントしているとの不満さえある。

・三つの誤解

①欠けているものは成果であって効率ではない。(コスト意識の欠如にあるのではなく)成果をあげられないことにある。

②人材がいないというのも弁解に過ぎない。彼らが直ちに官僚になることを知っている。

③事業の定義は抽象的たらざるを得ない(目的、成果が具体的でないとするのは弁解に過ぎない)

・公的機関と企業は何が違うのか。違いは支払いの受け方にある

企業においては顧客の満足が成果と業績を保証する。

公的機関は、予算によって運営される。予算型組織の存続のための要件は予算の獲得にある。そもそも予算なるものは貢献ではなく目論見に関わるものにほかならない。よって成果や業績に対して支払いを受けるのではない。

・成果をあげることなかれ

関係当事者間において対立をもたらす。もちろん論議は避けたい。そこに国民と自らを欺かなければならなくなる。予算に依存することは、間違ったもの、古くなったもの、陳腐化したものの廃棄を難しくする。現在行っていることは「永遠に続けるべきものである」ではなくかなり近いうちに廃棄すべきものであるということである。

・人は報われ方に応じて行動する。報酬、昇進、メダル、誉め言葉のいずれであっても変わらない。GNPの半分以上が公的機関(約束や努力に対して支払いを受けているに過ぎない団体組織)に流れているという事実に気づいている経済学者があまりに少ないためであろう。

予算に依存することそれ自体は悪いことでも望ましからざることでもない。

例えばシビリアンコントロールに裏付けされる軍事費の予算化などは、まさに戦争の自由企業(軍隊)を無くすためのものである。又、病院や大学のように活動、コストに対して支払いを受けることも誤った方向づけにならざるを得ない。皆無にすることは至難である。しかし、それを少なくし、対策を講じて中和することは出来る。

8、公的機関の成功条件 (六っの規律を課す)

①事業は何か、何であるべきか」を定義する。

②明確な目標を設定する

③活動の優先順位を決める(成果をあげるための責任を明らかにするため)

④成果の尺度を定める

⑤成果による自己管理を確立

⑥成果を監査する(恒久的な成功などありえない)

成功は失敗よりも捨てづらい。すでに自負を育てている。愛着を生み、思考と行動を習慣化し、過信を生む。意味のなくなった成功は失敗より害が大だ。

・公的機関の種類

1、自然的独占事業~電話、電力事業

2、公営の学校、病院~顧客ではない、どちらかと云えば拠出者

3、行政組織~防衛、司法機関~監査は不可欠(不正、不法、非効率)

第3章、仕事と人間

仕事を通じて働く人たちに成果をあげさせることである

9、新しい現実

肉体労働者から知識労働者へ~もはや高学歴は必要ないとする。しかし道具としてハンマーや鎌ではなく物ではなく記号である。

・肉体労働者の危機でもあり、労働組合の危機でもある。

知識労働者の地位、仕事、貢献については、現状はいまだ明らかではない。

・仕事と人のマネジメントに関して三つの挑戦に直面している

①被用者社会の到来

②肉体労働者の心理的、社会的地位の変化

③脱工業化社会における経済的社会的センターとしての知識労働と知的労働者の台頭

10、仕事と労働(働くこと)とは根本的に違う

仕事とは何か~課題、存在するもの

労働における五つの次元~生理、心理、社会、経済、政治

これまでのアプローチの誤りは、多くの経済学者(マルクスをはじめとする)は経済的次元が他の全ての次元を支配するとしてきたことにある。

11、仕事と生産性

生産性向上の4条件~①分析②総合③管理④道具

12、人と労働のマネジメント

X理論(未熟)とY理論(成人) ~アメとムチ

・心理的支配

産業心理学では、Y理論への忠誠を称える(自己実現、創造性、人格)だがその中身は心理操作による支配である。

人は弱く病み、自らの面倒は見られないとする。恐れ、不安、抑圧に満ちた存在に支配されたがる。仕事の上での人間関係は、尊敬に基礎を置く。そういった意味で心理的支配は、人をバカにしている。マネジメントだけが正しく他のものは全てにわたりバカであるとする。何と傲慢でバカげた仮定であるか。

・日本における企業での成功 (1,920年~30年代にかけて大企業向け)

①工場労働は職場に任せる②退職するまで研鎭を日常業務

②終身雇用④福祉厚生を重視⑤波風を立てない小心者育成、25年間は年功序列で昇進若い者の面倒を見、育てることこそ第一のマネジメントの責任とされた。強力なリーダーは育てられなかった。⑥責任分担が期待される

13、責任と保障

身分の保障~責任の重荷を負うためには仕事と収入の保証が必要。

収入の保証だけではなく仕事を与える仕組み、働く者を社会の生産的な一員にするための仕組みである。

14、人は最大の資産である

権限と権力とは異なる~混同するな

トップマネジメントの権限は、盤によって増大する。

第4章、社会的責任

自らの活動が、人、環境、社会に与える影響について責任を持つ

15、マネジメントと社会

社会的責任は、マネジメントしなければならない

政府に対する幻滅~政府に委ねることで問題が解決されるとは思っていない

16、社会的影響と社会の問題

組織(病院、大学、企業)は社会の機関であるしたがって社会自体の問題の影響を受けざるを得ない。組織が社会に与える影響には、いかなる疑いの余地もなくその組織マネジメントに責任がある。それは社会に対する責任ではなく自らの組織に対する責任である。最善の規制を実現するよう働きかける事がマネジメントの責任である。

17、社会的責任の限界

能力と価値観による限界

自らと自らの組織にとって欠けている能力が何であるかを知る必要がある。

権限の限界 ~責任と権限は、同一のものの両面である。

マネジメントたるものは社会の問題に対して、責任を取ることが自らの本来の機能を損ない傷つける時には抵抗しなければならない。

すなわち最大の社会的責任とは自らに特有の機能を果たすことである。したがって最大の無責任とは能力を超えた課題に取り組みあるいは社会的責任の名のもとに他から権限を奪うことによって自らに特有の機能を遂行するための能力を損なうことである。

18、企業と政府

政府との関係をどう考えるか ~重商主義も立憲主義のいずれも政治モデルであり、1世紀以上にわたり規範となり、指針となってきた。

重商主義(企業を指導、誘導、補助)立憲主義(規制機関)共に政府のパートナーとなり共生してきている。

新しい問題 ~この二つの主義(機能)も陳腐化した。

1、混合経済の進展

~政府と企業が競合関係にある中では役に立たなくなってきた

2、グローバル企業の発展

~300年前に一緒になった政治主権と国家経済が離婚し別居した結果生まれたものである。

3、社会の多元化

~政府は唯一の組織ではない。特有の目的を持つ無数の組織の一つに過ぎない。

4、マネジメントの台頭があった。

~政府と企業の間の昔からの境界線をなくした

解決策を判断する(最低限4つ)の基準

①企業とそのマネジメントを自立した責任ある存在にする

②変化を可能とする自由で柔軟な社会を守らなければならない

③グローバル経済と国家の政治主権とを調和させねばならない

④機能を果たす強力な政府を維持強化しなければならない

19、プロフェッショナルの倫理 ~“知りながら害をなすな”

・企業倫理以前の問題

①日常の正直さについて~誤魔化し、盗み、嘘をつく、贈収賄企業人のみならず、誰もがしてはならない誘惑に負けたものを厳しく罰するまでだ

②潔癖について~王、貴族、僧侶、将軍、画家、文人の間に求められた

③地域社会の活動に使う~しかし倫理とは関係ない。一市民としての個人貢献の問題である。

・リーダー的地位にあるものの責任 ~公的責任の倫理の基本

“知りながら害をなすな” (ヒポクラスの誓い)2500年前

Part2マネジメントの方法

マネジメントの職務が存在する、マネジメントの仕事が存在しその技能が存在しそのための組織が存在する。

20、マネジメントの必要性

複数の人間が協力して、多様な課題を遂行する必要が出てきたとき組織はマネジメントを必要とする。マネジメントを欠くときは管理不能となり、計画は実行に移されなくなる。最悪の場合には勝手に遂行されるようになる。ボスに気に入れられることのほうが成果をあげることよりも重要になる。たとえ製品が優れ、従業員が有能かつ献身的であっても、又ボスがいかに偉大な力と魅力を持っていても、組織はマネジメントという骨格を持つように変身しない限り失敗を重ね、停滞し坂を下り始める。

第5章 マネジャー  成果への貢献という責務である

21、マネジャーとは何か

組織の成果に責任を持つ者(ボスという意味のマネジャーではない)命令する権限ではない。あくまでも貢献する責任である。

22、マネジャーの仕事(5つ)

①目標の設定②組織化する③動機付けとコミュニケーションを図る④評価測定⑤人材の開発

・マネジャーの資質

~初めから身に着けていなければならない資質が一つだけある。才能ではない「真摯さ」である。

愛想がよい、人助けする、人づきあいが良いことが重視されがちだがそれで十分ではない。うまくいっている組織には、我儘なくせに誰よりも多くの人を育て将かれている者よりも、尊敬を集め取り付きにくくて気むつかしいボスが一人ぐらいはいるものだ。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。

・最大の貢献

1、職務設計の間違い(狭く設計した職務)~欲求不満に陥る。

2、副役職という職務(人を堕落させる)

3、マネジャーが部下の仕事を取る(本人のためによくない)

4、マネジャーの仕事は彼一人あるいは部下を使うだけで遂行できるものに会議、調整が必要な職務、頻繁に出張しなければならないような職務も間違っている。

5、マネジャーの仕事の不足をポストで補ってはならない(肩書は地位と責任を意味する)肩書を与えることは後で問題を起こす。

6、「後家づくりの仕事」は設計し直すことだ。優秀なものが倒れる職務(偶然から生まれた仕事に多い)

・結果を求めずにプロセスを重視するのはマネジメントとして真摯さに欠けるのではないか。(思い上がりであり、勝手に決めつけるな)

23、マネジメント開発

・開発に非ざるもの

①セミナー(会合)に参加する事(セミナーは道具の一つである)

②人事計画やエリート探しではない(無駄であり有害でさえある)選ばれたエリートの半分は、40代にもなれば口が上手いだけだったことが明らかになる。一方、放っておかれた人たちは軽んじられたことを覚えていて成果は上がらず、生産性も低く新しいことへの意欲は失われている。

・組織において最も重要かつ困難な問題

永年真摯に働いてきた者(貢献できなくなった者)の処遇~クビにするのは間違いである。正義と礼節にもとる。

・雇用主たる組織には

人の性格をとやかく言う資格はない。人権の侵害である。権力の濫用でもある。被用者は、忠誠、愛情、行動について何も要求されない。要求されるのは成果だけである。顧客が価値ありとし必要と求めるものからスタートしたい。

24、自己管理による目標管理 (4つの阻害要因)

①技能の分化②組織の階級化③階層の分離④報酬の意味付け

目標に照らして、自らの仕事ぶりと成果を評価できなければならない。そのための情報を手にすることが不可欠である。

情報は自己管理のための道具であり、上司が部下を管理するためのものではなく、自己管理による目標管理こそマネジメントの哲学たるべきだ。

25、ミドルマネジメント

伝統的なミドルは命令する人~下に向かって権限を持つ

新種のミドルは知識を供給する専門家~上や横に向かって責任を持つ。

26、組織の精神

組織の中心は、成果中心の精神があるか否かで決まる。天才を当てにするな配置、昇給、降格、解雇これらの決定こそ真の管理手段である。

組織の信条と価値観に沿って、成果を中心に考える。

間違いや失敗をしない者を信用してはならない。見せかけか、無能なこと下らないことにしか手を付けない者である。弱みがないことを評価してはならない。意欲を失わせ士気を損なう。人は優れているほど多くの間違いを犯す。そして新しいことを試みる。

第6章、マネジメントの技能

基本的な技術についての基礎知識を持たなければならない。

27、意思決定の力点

・日本における合意(コンセンサス)~見解の一致

・欧米では問題に対処する答えに置く

関係者全員が意思決定の必要を認めたときに始めて決定が行われる。この段階で意思決定の責任を取るべき人間に任せてしまう。そして誰に任せるかによって問題の答えも決まってくる。

~誰がどんな考えを持っているかすでに明らかになっているからである。これが日本流の意思決

*5つのエッセンスである

①答えではなく問題を明らかにする②反対意見を出しやすくする③複数の解決策を問題にする④誰が決定すべきかを問題にする

⑤意思決定のプロセスの中に実施の方策を組み込むことで関係者への売り込みを不要にする。そこで、

1、問題を明確にする~認識の違いが答えの違いをもたらす

2、意見の対立を促がす~全会一致ではなく、意見の対立を見ない時には決定しない(それによって想像力を引き出せる)

3、意見の相違を重視する~自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えることだ。自分が正しく他の人は間違いであると考えてもいけない。

4、行動すべきか否か~何もしないことも一つの決定である。変革を求めるものであるときは行動しなければならない。(行動しないと大切な機会を失うようであれば)

*変革というよりは改善のための機会に過ぎない時の2つの指針

1、得られるものがコストやリスクよりも大きい時には行動する。

2、するかしないか二股をかけたり、安易に妥協してはならない。あたかも外科医が手術するかしないかのようにいずれかにする。決定に当って売り込む必要があるのでは行動も起こされないし、成果も得られない。

・意思決定の実行を、効果的なものにするには実行を妨げることのできる者全員を決定論議に責任を持たせて参画させるべきである。これは単なる民主主義ではなくセールスマンシップである。具体的な実行手順として割り当てられ責任として割り当てられない事には善き意図が存在するに過ぎない。

・「決定を知らなければならないのは誰か」の大切さ。

意思決定はリスクを伴う仕事である。大事なのは問題への答えではなく理解である。知的な遊戯でもない。ビジョン、エネルギー、資源を総動員すること

28、コミュニケーション (4つの原理)

①知覚 ②期待 ③要求 ④情報ではない。

コミュニケーションと情報は相反する。しかし両者は依存する。

1、知覚である

昔からの答え(禅僧の神秘性)~誰も聞かなければ、音はない。コミュニケーションを成立させるものは受け手の捉え方である。誰も聞く者がいなければコミュニケーションは成立しない。コミュニケーターは発信するだけである

ソクラテスは、大工と話す時は大工の言葉を使えといった。

経験のない言葉で話しかけても理解されない。受け手が何を見ているかを知らなければならない。その理由を知らなければ。

2、期待である

期待していないものは反発を受け。受け付けられることさえない。無視され、あるいは間違ってみられ聞かされる。

*期待に反しているかもしれないことを間違いなく伝える方策

つまり連続した心理状態を断ち切るショックが必要となる。受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを強引に認めさせるためのショックの必要を知ることが出来る。

3、要求である

受け手の信念、価値観、性格、欲求までも変える~だがそのようなケースはまれである。人の心はそのような変化に対し激しく抵抗する。

4、情報ではない

コミュニケーションは知覚の対象であり、情報は論理の対象である。感情、価値、期待、知覚といった人間的な属性を除去するコミュニケーションにとって重要なものは知覚であって情報ではない。

・上から下へ、下から上へ

一方的に話したのでは、話は通じない、上から下へ下から上へどちらにしても問題の解決にはならない。耳を傾けることを強調するのは、受け手からスタートするとの認識からである。

・コミュニケーションへの前提 ~ 目標管理

同じ事実を違ったように見ていることを互いに知ること自体がコミュニケーション。これが成立するには経験の共有が不可欠である。それは組織の在り方であって、「私からあなたへ伝達する」といったものではない。「我々の中の一人から我々の中のもう一人の人へ伝達する」ものである。

29、管理  30、経営科学

第7章マネジメントの組織 31、新しいニーズ

・フェヨ-ルの職能別組織(中小企業向け)

・スローンの分権組織(大企業向け)

*仕事中心型か人間中心型か(階層型組織、自由型組織) 唯一絶対の組織構造が存在するかどうか(完壁な組織構造などありえない)

32、組織の基本単位

・貢献分析

工務と商務 ~ 研究、技術、生産と販売、財務

ラインとスタッフ ~ 現業と非現業。職能による分類

・悪い組織

1、マネジメントの階層が増加する組織

2、組織構造に関わる問題が、頻繁に発生する組織

3、重要でない問題や的外れの問題に向けさせる組織~基本活動、成果、業績に関心を向けさせることである。(態度、礼儀、手続き、縄張り意識に関心を向けさせてはならない)

・組織を機械的に組み立てたときに発生する。戦略を要求するのではなく組織論に従うときに発生する。成果ではなく組織構造そのものに焦点を合わせるからである。

4、大勢の人間を集める会議を頻繁に開かざるを得なくなる。

理想的なのは、会議なしに動く組織である。

5、人の感情や好き嫌いに気を遣うような組織

人の気持ちを気にしなければならない状況は最悪の人間関係である。人員過剰の組織(十分な空間を必要とする)仕事ばかり増え、摩擦、神経過敏、イライラが募る

6、調整役、補助役が必要となる組織。

7、悪い組織の典型としての組織病が存在する

33、組織の条件

①明快さ ②経済性 ③方向づけの容易さ ④理解の容易さ ⑤意思決定の容易さ ⑥安定性と適応性 ⑦永続性と新陳代謝

34、(5つ)の組織構造

1、 職能別組織(理論的な分析から生まれた)

2、 チーム型組織

3、 連邦分権型組織

4、 議事分権型組織

5、 システム型組織アメリカのNASA(宇宙開発のための組織)

35、組織構造についての結論

組織は道具である。目的達成のための手段である。それ自体目的ではない。又それは成果である。

Part3、マネジメントの戦略

トップマネジメントとは 方向づけ、ビジョン、基準を設定する機関である。

36、ドイツ銀行物語 ~トップマネジメントの仕事と組織

《教訓》

1、事業全体を見ることが出来、事業全体を考えて意思決定の出来る者のみが果たし得る課題だからである。

2、独自の構造(独特の組織構造)を必要とする。

3、独自のインプット機関(刺激と情報、思考、)供給すべき独自の機関

37、トップマネジメントの役割

・多元的な役割~各種の能力、性格(考える人、行動する人、人間的な人、

表に立つ人)これら四つの性格を併せもつ者はほとんどいない。

・これらの役割が、多様な能力と性格を要求する事実とが複数の人間に割り当てることを必須にする。

38、トップマネジメントの構造

“一人ではなく、チームによる仕事”

役割の分担(チームとして必要となる)その責任を負うものは、トップマネジメント以外の仕事をしてはならない。

・チームワーク(仲の良さだけでは、うまく機能しない)

1、最終的な決定権を持つ。

2、担当以外の分野については、担当メンバーに回さねばならない。

3、メンバーは、仲良くする必要はない。尊敬しあう必要もない。

但し、攻撃しあってはならない~互いのことをとやかく言ったり、批判したり、けなしたりしてはならない。褒めあう事さえしないほうが良い。

4、ボスではなく、リーダーである。~ 委員会ではない、チームである。

39、取締役会  (ほとんど機能していない)

第9章、マネジメントの戦略

40、規模のマネジメント

規模と複雑さ ~ 適切な規模とは、12人から15人を超えることはない。

・小企業のマネジメント

際立った存在となるための戦略を持たなければならない。現実は、ほとんどが戦略を持たない。機会中心でなく、問題中心である。問題に追われて日を送る。だからこそ小企業の多くが成功出来ないでいる。

・中企業、大企業のマネジメント

41、多角化のマネジメント  42、グローバル化のマネジメント

43、成長のマネジメント~成長への準備

44、イノベーション(革新)  45、マネジメントの正統性

正統性の根拠は一つしかない。人の強みを生産的なものにすることである。マネジメントの権限の基盤となる正統性である。何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段としての個人の強みは、社会の為にもなる。

付章、マネジメントのパラダイムが変わった

1、組織は透明でなければならない

2、最終的な意思決定者が必要である

3、権限と責任

4、上司は一人 

5、階層は少なく

以上  2021・01・27