<自然のしくみがわかる地理学入門>

地理学入門 一般書籍

<自然のしくみがわかる地理学入門>

水野一晴 著

地形

1-1 平野の地形 

沖積平野と洪積台地

最終氷期につくられた谷に泥がたまった地形を沖積平野と呼ぶ。(縄文時代

氷河最盛期(2万年前以前にすでに海から顔を出していた高台を洪積台地

地下水と地盤沈下

大量の地下水をくみ上げることで地盤沈下を引き起こし元には戻らない。

河川が作る地形

自然堤防地帯(氾濫原)、天井川、三角州

1-2山の地形  日本列島は一つの大きな山脈

氷河と地形:カール・モレーンの存在

周氷河環境:機械的風化作用・化学的風化作用

1-3 断層と火山と地震

断層と地溝 琵琶湖は断層湖、バイカル湖(ロシア)細長く巨大で水深が深いのが共通点。

アフリカ大地溝帯(リフトバレー)当初東アフリカには熱帯雨林が分布していたが、そのご新たに誕生した山地に遮られ乾燥化してサバンナ(草原)となり熱帯雨林の住人(類人猿)は樹上から地上に下り二足歩行するようになり人類へと進化する。尚、この大地溝帯の火山活動によってケニヤ山(5199m)・キリマンジャロ(5895m)が誕生した。

ライン地溝帯 フランスとドイツの国境をなしているライン川流域。

地殻の割れ目に沿ってマグマが上昇する地帯であるため、あちこちで温泉が湧いている。裸で入れる日本の温泉に人気があるのは、ヨーロッパの温泉では水着を着用する決まりがあるためでもある。

プレートと火山 太平洋東部と大西洋中央には南北に走る海嶺と呼ばれる盛り上がった割れ目がありマントルの上昇によってマグマが供給され新しい地殻(プレート)が生産されている。地球の表面は14~15枚の厚さ100Km位の岩盤(プレート)に覆われている。大陸プレートと海洋プレートがあり、西に進む太平洋プレートは日本海溝(トラフ)の所で北アメリカプレートの下に沈み込み、北西に進むフイリピン海プレートは南海トラフの所でユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。トラフの所で岩盤が熱により溶けてマグマが生成され地上に表れたのが火山である。

・日本周辺の北アメリカ、ユーラシア、フイリピン海という三つのプレートが富士山の場所で会合している。つまり割れ目の境界である。たまたま富士山がそこにあるのではなく地球上で唯一つの特異な場所だからこそ必然的に富士山があるのだ。

・インド・オーストリアプレートがユーラシアプレートの下に部分的に潜りながら押し上げているためヒマラヤ山脈(8000m級)が誕生した。

フオッサマグナ 北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界に当たる糸魚川・静岡構造線(妙高山、草津白根山、浅間山、八ヶ岳、富士山、箱根山、天城山と火山列が続く(赤倉、草津、伊香保、箱根などの温泉が集中)

・ゴンドワナ大陸 アフリカ大陸、南米大陸、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、マダカスカル島に分割

マグマと岩石 噴出したマグマ(溶岩)を火成岩と呼ぶ。玄武岩(黒、灰色)、安山岩(灰色)、デイサイト、流紋岩、花崗岩(御影石)

・火山の分類 御嶽山の噴火によって消滅(死火山)水蒸気爆発として活火山

・堆積岩 海の底の堆積物が地殻変動で隆起して山となる。古地中海(テチス海)・日本のカルスト地形(鍾乳洞)石灰岩が溶け風化

・変成岩 大理石に代表される。(屋根瓦や硯)

カルデラの形成 火山の噴火による火口(カルデラ)、爆発カルデラ、侵食カルデラ。尾根部分を外輪山(阿蘇中岳、箱根駒ケ岳)カルデラ湖(洞爺湖、支笏湖、屈斜路湖、田沢湖、十和田湖)

断層と地震 地震によって地層や岩盤に力が加わって亀裂が生じるのが断層である。弱い断層に沿って、繰り返し地震が引き起こされる。

・火山灰と歴史 ポンペイ(イタリア)火山噴火で消滅。

1-4 海の地形

火山島 マグマが海底から噴出すると火山島が出来る。ハワイの所にあるホットスポット出マグマが噴出し火山島が誕生した。

サンゴ礁 日本付近のサンゴ礁の北限:ㇳカラ海峡、種子島、壱岐、房総半島、佐渡島あたり、日本海流《黒潮》、対馬海流《親潮》暖流の影響。

環礁(沖ノ鳥島)、排他的経済水域・領海、尖閣諸島の領土問題

海岸地形 リアス海岸とフイヨルドはどのようにできたのか?

東日本大震災(2011311、三陸海岸がリアス海岸、険しい壮年期山地が沈水すると海岸線に垂直に立つ尾根が岬となり、V字谷が入り江となって鋸の歯のようになり水深が深いため漁業が盛んとなるが、津波は奥に行くにしたがって高さを増幅させ大きな被害をもたらす。一方、氷河が削って出来たU字谷が沈水したものをフイヨルドと呼ぶ。世界の大平野には、三角江(ラッパ状の入り江)と呼ばれる広大な平野が後背地となるため大都市が立地しやすい。

ライン川《ロッテルダム》テムズ川《ロンドン》セーヌ川《ルアーブル》ラプラタ川《ブエノスアイレス》などその典型である。

ハドソン湾とボスニア湾 氷河の重みでへこんでできた湾

ハドソン湾(カナダ)、ボスニア湾(北欧)

1-5 世界の地質・地形と鉱山資源

世界の大地形と造山運動 山脈の高さの違いは何によるのか?

新期造山帯はアルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯に分かれる。

世界一高い山エベレスト山(チョモランマ、8848m)

新期造山帯の褶曲構造と石油生産

環太平洋造山帯地域 スマトラ島のミナス油田、アンデス山系(ベネズラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、チリ)・ロッキー山系(カリフオルニア、カナダ)のアルバータ油田、アラスカの油田

西アジアでは、ペルシャ湾、アラビア半島側に多くの油田が生じる事となる原油生産の上位国アメリカ②ロシア③サウジアラビア④イラク⑤カナダ⑥中国⑦アラブ⑧ブラジル⑨クェート⑩イラン

石炭生産と古期造山帯 

石炭生産上位国中国②インド③インドネシア④オーストラリア⑤アメリカ⑥ロシア⑦南アフリカ⑧カザフスタン⑨コロンビア⑩ポーランド

ポーキサイト生産と赤い土壌

酸化アルミ(アルミナ)はアルミニュームの原料で熱帯雨林地帯に分布岩石が風化してアルミニュームが遊離しそれが残留してポーキサイトが出来る。

ポーキサイトの生産上位国オーストラリア②中国③ギニア④ブラジル⑤インド⑥ジャマイカ⑦ロシア⑧カザフスタン⑨サウジアラビア⑩インドネシア

銅の生産と環太平洋造山帯

プレートの沈み込みによる斑岩銅鉱床より銅が産出されるため環太平洋造山帯で多く生産される。

銅の生産上位国①チリ②中国③ペルー④アメリカ⑤コンゴ⑥オーストラリア⑦ロシア⑧ザンビア⑨カナダ⑩メキシコアンデス山系、ロッキー山系の地域が多い。

鉱石の生産と安定陸塊

先カンブリア時代の造山運動によってできそれ以降造山運動を受けていない地形を安定陸塊という。その時代盛んに光合成が行われ酸素が生み出され、海洋中の鉄分と酸素が結合し、酸化鉄となって沈殿し鉄鉱石となる。

鉄鉱石の産出上位国オーストラリア②ブラジル③中国④インド⑤ロシア⑥南アフリカ⑦ウクライナ⑧カナダリカ⑨アメリカ⑩イラン⑪スウェ―デン

大地形としての侵食平野

古くて広い平野を侵食平野といい、残丘(インゼンベルグ)を形成する。

浅海底地層が隆起して陸上で侵食を受けた平野を構造平野と呼ばれている。メサ(テーブル状)・ビュート(孤立丘)、ケスタという丘陵地形(パリ盆地、ロンドン盆地、五大湖周辺)

2、気候

・2-1 気候 ジエット機はなぜ揺れるのか

大気の大循環と気候区

赤道付近が太陽からの受光量が最も多く地面や海面が熱せられるため上昇気流が生じ、多量の降水がある。この上昇気流は成層圏(大気の攪乱がない)と圏界面(高度:南極で6千m~赤道で1万7千m)対流圏(大気の流れがある)の境界すなわち圏界面迄上昇し、それより上は行かず南北に分かれ北緯30度と南緯30度付近で下降気流となる。尚、成層圏には紫外線を吸収するオゾン層があるのでそれ以上は気流の上昇がない。

梅雨前線

南北30度付近で生ずる下降気流は地面にぶつかって南下する。この南下する冷たい風と亜熱帯高圧帯から吹いてくる暖かい風が北緯60度付近でぶつかり寒帯前線をつくり雨を降らせる。日本付近の梅雨前線は南の小笠原気団と北のオホーツク気団が6~7月に停滞して長雨をもたらす。8月になっても小笠原気団の勢力が増さないと前線が日本列島にかかったまま続くことになる。

偏西風と貿易風 ヨーロッパは日本より冬に暖かいのはなぜか?

北半球では、偏西風(南西の風)と北東貿易風・南半球では、偏西風と南東貿易風が生ずる。ヨーロッパは冬に暖かい海の方から吹く偏西風と北大西洋海流という暖流の影響で、海に近い地方はそれほど寒くならない。しかし内陸に行くに従って冷やされ東ヨーロッパ~ロシアでは気温は下がる。

ヨーロッパでは冬季には日光浴、夏季にはサマータイム制による生活習慣

大気の大循環の季節移動と世界の気候

熱帯雨林気候・砂漠気候、乾季のサバナ気候、ステップ気候・地中海性気候

熱帯収束帯の季節移動

地球上の気候は地球の地軸が23・4度「傾く」ことから生じている。

上昇気流(降雨)と下降気流(乾燥)

季節風(モンスーン) 

降雪量 新潟県が降雪量が日本一なのはなぜか?

対馬海流(暖流)が一月二月の寒い冬に日本海を進むため北西季節風(シベリア高気圧)は、日本海を渡る間に大量の水蒸気を吸収する。その結果日本海を渡る距離が最も長い新潟に雪を降らせる。

季節風と降水量 熱帯モンスーン気候(インドのアッサム地方)世界的多雨地帯

海流 なぜ寒流は大陸西岸に流れるのか

大陸東岸には暖流、西岸には寒流が流れている。大陸西岸では、海岸から海の方向に貿易風が吹くことから海面の水が沖合に引っ張られ水が減る分を海面を一定に保つために海底から湧流として冷たい水が上がってくる。暖流と寒流がぶつかる潮目は良い漁場となる。

・気温の日較差と年較差

2-2 気候変動

気候変動と日本の動植物の分布

北海道は水深の深い津軽海峡で本州と繋がらなかったために、小動物は渡れなかった。尚、ベルグマンの法則によると寒冷地になるほど体が大きくなるとされる。北極熊はヒグマより大きい、ツキノワグマよりヒグマのほうが大きい。縄文期(温暖化)の貝塚、弥生期(寒冷化)の埋没林の存在。

気候変動とアフリカの動物分布 最終氷期の最盛期(約2万年前)にアフリの熱帯雨林がほとんど消滅した。一部にかけての3か所に熱帯雨林は非難した。縮小した熱帯雨林で、ゴリラは樹上から地上に下りて生活を始めた。一方東南アジアは氷河の影響を受けずに熱帯雨林も消滅せず、オランウータンは樹上生活を続けている。

温暖だった縄文時代には、アフリカのサハラ砂漠に雨が降り「緑のサハラ」と呼ばれていた。

気候変動と世界の歴史 

なぜ14~17世紀にヨーロッパでペストが流行したのか?

寒かった4世紀にはゲルマン民族が海側へ移動した。暖かだった8~11世紀には北欧でバイキングが活躍し、日本では平安朝が長く続いている。しかし鎌倉以降寒冷化が続くと政権は長続きしない。13世紀(寒い時期)にはモンゴル民族がアジアからヨーロッパまで遠征している。

14世紀に小氷期に入り19世紀まで続いた。ヨーロッパ地方では、暖炉の薪が不足し羊毛の上着を十分に乾燥させることが出来なくなり、蚤の繁殖を招きペストの流行をもたらした。

温暖化と氷河の縮小 20世紀以降の温暖化に伴い氷河は縮小している。

3,植生と土壌

3–1 世界の植生と土壌

多様な植物種の日本と単調なヨーロッパ

日本列島は世界でもかなり植物が豊富な所です。ヨーロッパは、アルプスとピレネー山脈が樹木の種を遮る障害となり樹種は激減した。

熱帯雨林 乾季がない気候で常緑広葉樹が主体、冬でも葉をつけている。

樹木の背丈は高く一般に硬木(紫丹、黒檀、チーク)が多い。大型類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボのボ)、ピグミー(身長150㎝)という狩猟採集生活者が存在する。

サバンナ 雨季と乾季のあるサバンナ気候

落葉広葉樹が分布、樹木の背丈は低く野生動物が生息するのに適している。

尚、土壌はラテライト性土壌で酸化鉄(錆色)栄養分が少なく農業は生産性が低い。シロアリ塚が多い(シロアリはアリの仲間ではなく、ゴキブリの仲間)

ステップ 「黒土地帯」と呼ばれ小麦などの世界の穀倉地帯になっている。

砂漠 ステップよりさらに乾燥すれば、サボテンなどの多肉植物が主体の砂漠となる。

タイガ 針葉樹林(モミ、松、カラマツ、)常緑針葉樹(モミ、トウヒ)落葉針葉樹(カラマツ中心)~天まで届け《トド》もうええぞ《エゾ》

日本ではダケカンバ(落葉針葉樹)

温帯の森林 

夏緑樹林(冷温帯)主体はブナで、ミズナラ、コナラなどの落葉広葉樹と照葉樹林(暖温帯)の常緑広葉樹主体は、シイ、ヤカシ、ツバキである。

地中海性気候の植生 夏乾燥し、冬に雨が降る(オリーブやコルク)世界の主要ワイン産地

森林の役割 森林の団粒構造による保水能力。伐採すると洪水がおきる。

 

3-2 山の植生

高山のお花畑  分布と環境

熱帯高山の氷河縮小と植生遷移

  地球温暖化に伴い氷河がどんどん縮小し、山頂に向かって後退し、高山植物は山を登っている。

以上