人生問答(下) 池田氏から松下氏へ

創価学会関連書籍等

<池田氏の質問>

6、政治に望むこと

・法治主義の倒錯

 <松下氏>答え

行政は法に基づいて行わなければならない。ところが法によって国家権力が暴走している姿にあるかどうか軽々に断定できない。強い圧力団体に対する国家権力は無力に至るケースもある。混乱の要因でもあるし国家権力の暴走と無力化という圧力は国民の良識を高める事しかない。

・人口と議員定数の不均等

<松下氏>答え

公選法による5年毎の是正が議会で実施されてないところに起因していると同時に国民が十分に理解していない面もあり政党も共に責任を負うべき。

・日本の政党と議会  (議会の在り方について)

自民党のどこが悪く、野党が与党と対抗できない理由はどこにあるのか。

<松下氏>答え

国家経営の基本的哲理がはっきりしてないところに、お互いの不信に繋がっている。国の基本法として憲法があり其の憲法をどのように生かし活用していくかという基本理念が必要です。会社の場合でも定款の外に経営理念というものを持ちそれに基づいて方針が立てられ経営を盛んならしめています。どの政党がどうこうというよりも、政党を含めて国民全体として基本理念を求めていくことが大切です。

・刑法改正の方向 (国家中心主義へ傾き過ぎる感あり)

<松下氏>答え

民主主義国家としての日本は国民中心主義です。これには国家権力が適正に働く必要がある。

・靖国法案について (国家管理にすることへの疑問)

<松下氏>答え

祭られる人達の声なき声を聴くことに“素直な心”になってその人たちにきいてみる。奉ってくれたほうがいいというか、あるいは二度と戦争を起こさないのであれば別に奉ってもらはなくていいというか。

7、社会を見る目

・インフレ抑制の施策

インフレ経済を構造的に大転換するにはどのような方策が望ましいか。

<松下氏>答え

世界的な要因(海外要因)は日本だけでどうこうするわけにはいきません。日本人自身の大きな無駄によるものも考えられるのではないか。仕事の無駄、施設の無駄、物資の無駄、時間の無駄、気候の無駄、企業間の過当競争の無駄、これらの無駄がインフレに結びついてはいないかということに気づかねばどの政党でもインフレは止められません。

・商道徳に反する企業

大手商社による買い占め、売り惜しみという行為。

<松下氏>答え

便乗値上げは商道徳上許されないですが、だからと言って政府も野党も企業や商社の追求ばかりに捉われて根本的に国民への確固たる方針を発表する必要があったのではないか。

・エネルギー源の確保と石油に代わるエネルギーの開発について。

<松下氏>答え

資源輸入に関して日本が安心できる取り決めを行なうことが大切。

第二次大戦時において京都、奈良(古都)には爆弾は落とさなかったことを見ても、日本の古都としての認識から戦災をまぬかれた事実、又あのヒトラーでさえパリは宝物と捉えていた。そうゆうことから外交面での対外国をして日本を援助しなければならないと思わしめるよう働きかけが大事。

もはや資源を強奪して手に入れる時代ではない。

・住民運動をどうみるか

<松下氏>答え

行き過ぎぬよう良識を涵養する必要がある。

・企業の内部告発をどう思うか

<松下氏>答え

意志の疎通を図り下意上達が行われやすい空気を作っておくことが肝要。

社会と企業の共同利益という観点から善意に基ずくものを望みます。

・公害企業の在り方

水俣病の悲惨時における具体的方策と企業の在り方

<松下氏>答え

公害企業の経営者の立場から見るならば、事態の発生原因を調べそれが重大な問題だと解ればどのような処置を取ったらいいかをすぐ研究、その結果適切な方策があれば直ちに実現させますが、もし当面そういった方策がない場合には一時操業を停止するか工場を閉鎖するといったことを考えるでしょう。こうしたことは公害に限ったことではなく、不良品が発生した場合などでも良品が出来るまで消費者やお客様に迷惑がかかる恐れがあるときには工場生産を止めて対応に当たる。

・公害の予測技術

<松下氏>答え

進歩には一面弊害が伴うものです。技術開発の分野においても公害発生を予測する技術も並行して開発されることが必要とされています。

・企業秘密の公開

公害問題の焦点の一つは、企業秘密主義に有り。

<松下氏>答え

人命にかかわるような問題が生じたときは公開すべきでしょう。多くの企業はそのようにやっていると思います。そうしないと企業は信用を落とすことにもなり、必ず行きづまり、事故を起こす事になるでしょう。公害とか不良品には企業は非常に敏感になっています。資本主義社会ほどそういう傾向が強い、自由でしかも激しい競争の中では誠心誠意といった配慮がますます必要となってきます。

・住宅土地問題の解決

<松下氏>答え

方策として都市部においては高層化を図る。香港を例にするならば淡路島の二倍くらいの所に四国の人口よりも多い人が住み着いて密度にして日本の⒑倍以上と言われているが高層化することで解決を図ってきた。香港で出来た事が日本にできないわけはない。

・革命技術について

<松下氏>答え

革命国家にとってはやむを得ない状態として国家意識を固めていくために必要とされる。革命の基盤が安定するまでの間は重点が置かれることもやむを得ないと思います。安定期になれば一般芸術も興隆してくると思う。

・抜本的な土地対策は (地価高騰に対する)

<松下氏>答え

解決方法はないのでは、あえて考えられることはすべて国有化する事。

しかし混乱を起こすだけであって実現は難しいと思われる。

・オカルトブームと社会(念力、超能力)

<松下氏>答え

社会なり人心が不安定な時代には起こりがちな現象で、やがて安定してくれば少なくなってくるでしょう。

8、何のための教育か

・学問と実生活

<松下氏>答え

学問は人間のためにある。学問のための学問に陥る危険性はある。人間としての良識、良心の培養が肝要。(人間教育の場が必要となる。)

・いかなる人間を育てるか

<松下氏>答え

戦前教育は国家的中心の教育であった。(やむを得ない事情による)

  • 人類的見地 ②国家的、民族的見地 ③個人的見地からこの三つの要

素がバランスよく教育されることを望む。

・教育権の独立を (四権分立の提唱)

<松下氏>答え

教育が政治力で左右されることは好ましくない事であって、政治から独立させることは好ましい。国民投票で選びどの政党にも属さず厳正中立を目指すべきです。~ 行政の一機関から独立の形。

・学校教育と家庭教育との関連

家庭教育には独自の理念と方法が必要

<松下氏>答え

入試においては学科中心でなく人間的良識といった査定を合否のポイントとしたらいいと思う。(家庭教育、義務教育、高等教育といった捉え方から考えても)

・教育における父親の役割

<松下氏>答え

父親に確たる信念がないから母親も単なる感情的な愛情によって育てるといった面が強いように思われます(確たる人生観、社会観を父親に求める)

・子供は誰のものか

戦前の大家族主義の影響のせいで子供は家の者、親のものといった考え方が、根強く残っている。

<松下氏>答え

子供自身のものというのが本質です。“幼にしては親のもの、長じては国家社会のもの、さらに長じては子供自身のもの”

子供は親のものというと、ともすると親の勝手な扱いによる「子捨て、子殺し」といった風潮を生むことにもなる。

・性教育について

<松下氏>答え

必要性については疑問であるがただ性道徳を高める教育は必要である。

・統合の原点に「人間の学」を

<松下氏>答え

細分化された学問の狭い範囲での真理に固執するため大きな真理を見忘れ統合調和を怠るようだ。その総合調和の役割を果たすものは(人間の学)だという意見には全く賛同します。

・人間学構築への提言(総合学としての人間学の構築)

<松下氏>答えが

人間学こそすべての学問の中心にならなくてはならない。人間の探究というものを宗教に委ねてきたことで学問は主として科学的分野を担当してきたとも考えられる。

9、現代文明への反省

・科学の発展に伴う矛盾(専門バカ~狭い視野からの発現)

<松下氏>答え

広い視野に立っての判断が出来なくなるという危険性も大きくなる。自分の専門だけに捉われることのないよう助言警告していかなくてはならない。

・新しい学問創造の指標

未知への探究心、真理発見の喜び

<松下氏>答え

宗教とは別個の学問としての総合した人間学が創造されなくてはならない。

人間観の喪失が叫ばれている。

・人間疎外の克服

人間精神の空洞化~人間自身が人間疎外を生んでいるのではないか。人間が人間を大事にしていない。人間の幸せのために人間尊重を前提とする。

・消費文明からの転換

生き方の転換、文明の転換 ~ 作り出す文明から循環させる文明へ

<松下氏>答え

使い捨て文化への反省(大量生産による使い捨てへの反省)

・哲学の復興を(人間尊厳の哲学)

<松下氏>答え

シュバイツアー博士のいう今日の哲学の無力化についてと題する提言

「それは第一に近代人が多忙と過労のため精神が委縮し真面目な教養よりも娯楽に心を奪われ集中力を失い第二に特殊な技術が求められるために人間の本質を喪失する結果を招いているためである」と指摘されている。

・水産資源の将来

<松下氏>答え

国際的調査の必要性(世界水産会議)あらゆる資源は世界共通のもの。

・エネルギー資源の共同開発

石油に代わる新しいエネルギーの研究、開発 

<松下氏>答え

基本的には共同開発は可能、エネルギー問題は解決する。

・都市交通機関の開発

<松下氏>答え

自動車は生活必需品、小型化、マイカー規制、小型バスの利用等改善

・核家族における人間関係

<松下氏>答え

躾教育が大切(国民にとって好ましい風習)

・映像文化と活字文化 (論理的人間から感覚的人間への移行)

<松下氏>答え

テレビ(低俗な内容であれば、活字文化以上にその内容は吟味されるべきです)スポンサーの関係でともすれば視聴率に捉われ低俗化される弊害も指摘されている。

・自然観の変革 (自然との共存、調和)・依正不二

<松下氏>答え

人間の持つ環境に対する順応力、適応力は絶えず進歩の過程を歩んでいるのではないか。

・人類の危機をどう乗り切るか(人口、食糧、資源という難問)

<松下氏>答え

人間の英知を信ずるなら人間はそれほど愚かではないと捉える。努力はするがそう心配はしない。心配しても苦悩はしない。人間は必ず好ましい形に進歩していくだろう。

・終末観流行の原因

<松下氏>答え

終末論にはこだわらない。あまり大層に考えず自然な姿で歩み進めていく。世の中の生成発展、宇宙の生成発展というものを素直に考えて対処する。

⒑、日本の進路

・国家目標の設定(全地球的規模の安全保障)

<松下氏>答え

世界は一つの共同体であるという意識を強めていく必要がある。

・伝統の根底にあるもの

<松下氏>答え

主座を保つ(自主性、主体性を持ち続ける)日本特有の気候風土と建国2千年に及ぶ独自の歴史のいい点、好ましい伝統というものに目を向け、そこに日本人としての誇りを持って受け継ぎつつより良き日本を創造していく。

・恥の意識の評価

<松下氏>答え

世間は正しいものである。全体としてみれば神のごときものであるという見方。恥を知るという事は、正しいことに従うというのと同じ意味だと言えよう。他人に対して恥じないということは、正義に恥じない、良識に恥じない、天地に恥じないということでもある。

・憲法をどうみるか

崇高な理念は次代が変わっても変えてはならないものである。

<松下氏>答え

基本的三条件(普遍性、国民性、時代性)

この中で普遍性、国民性といったものは本質的に変わらない。時代性のみ変わっていく。時代性に照らして検討すべきである。

・国家防衛の考え方

軍備拡張への道は経済大国化と機を一にしている

<松下氏>答え

自国防衛の必要性(軍備によるものと軍備によらないもの)

平和の心無き国民が軍備を持つことは危険です。軍備によらない防衛力については、日本が常にどの外国からも敬意を持たれ日本を困らせるようなことはさせてはならないといった姿を生み出すことです。憲法で軍備が禁じられているならどの国からも尊敬されるような姿を築くことが肝要です。すぐれた徳行を持つことのほうがより望ましい姿である。

・望ましい経済発展の方向

(経済成長を支えてきた要因他、これまでの経済の在り方)公害問題への対処

<松下氏>答え

敗戦による物資の欠乏に対処してきた結果による発展。物事には必ず反堂がある。経済発展の反動としての公害。いいと思ってやってきたことの反動として公害が発生した(やむを得ない事情もあって)難しい方策だ。

・経済危機と転換の道

<松下氏>答え

原則としては自給自足でしょうが現実的には実行できないでしょう。そこで資源の輸入は避けられないでしょうがそこには資源供給国との一体感を確立する外交政策が大切になってくるでしょう。

・発展途上国への経済援助

エコノミックアニマルの悪評の原因

<松下氏>答え

日本国内における過当競争のあおりで対外国においては、エコノミックアニマルと映るわけで真に相手国の為を考えてこれからは、必要とする資本、技術、物資を持っていけば不評を買うようなことはあり得ないと思う。

・アジアの反日感情(田中首相のアジア諸国訪問での対日不信)

<松下氏>答え

海外進出の不評の要因の一つには、謙虚さのなさと奉仕の心も薄かったのではないか。官民ともにその国で骨を埋めるとするような人を派遣することが望ましい。

・国際感覚を身につけるには

<松下氏>答え

占領政策もあって、自国の歴史を教えなかったようで教育の在り方を考え直す事です。

・日中友好の姿勢(1972年9月の国交正常化)

<松下氏>答え

2千年にも及ぶ長い両国の信頼関係が基本的に損なわれるものではないという考えに立って、日本にとっては先輩の国との友好は以前にもまして濃いものになっていくのではないか。

・伝統を見る目

<松下氏>答え

“素直な心”で、あるがままに之を見る。日本の伝統というものは、より穏やかというかより人間性にプラスする妥当なものであったと言える。

11、世界平のために

・世界平和を目指す実践

<松下氏>答え

平和というものは待望しているだけでは生まれない。創価学会がその思想を広く世界に普及することによって世界平和に貢献していこうとしておられるのは誠に嬉しく賛成します。

・平和のための前提条件

<松下氏>答え

人間としての意識革命

・世界連邦の可能性

<松下氏>答え

将来世界連邦という形になっていくと思う。ある期間を民族性の尊重という方向で考えたらいいと思う。

・世界共通語は必要か

<松下氏>答え

必要となっても自国語はどうするのか、二本立てでいいと思う。急ぐ必要はないのではないか。

・武力の均衡をどうみるか

「ダモクロスの剣」・バランスオブパワー・虚構の平和。武力による平和をも過渡期におけるものとして評価していく事となるでしょう。

・戦略兵器制限交渉と米ソの姿勢

米ソ間における(SALT)交渉の行方

<松下氏>答え

良識ある姿勢での交渉を望む。

・人材を持って世界の平和に寄与

<松下氏>答え

経済力を以って寄与することと相反しないものと捉えたい。双方の見方としては ①天然資源 ②生産性の向上(政治面) ③人材

11、世界平和のために

・中国の社会主義路線

共産主義体制にあっての中ソ論争、毛沢東主義

<松下氏>答え

中国とソ連の取り組みに違いがあるのは当然であり、かえって好ましいと思います。我が国との対処法としては、兄弟のよしみを生み出してゆく事。

・毛沢東と周恩来(二人の指導者について)

<松下氏>答え

「独立自主・自力更生」を国是とし「毛語録」を国訓とする姿勢は評価

・文化大革命について

<松下氏>答え

革命国家中国にとってさらに発展させようというものであり、ほぼ成功しつつあるという面からして、比較的犠牲の少ないほうではないか。

・中東民衆の平和のために

イスラエルとアラブ諸国に対する内政干渉に

至らないこと。

<松下氏>答え

宗教的民族的なものが絡んでいるようで、2千年来の確執というのも我々の常識では判断できない。日本としては、双方の国から尊敬されるにふさわしい国となることで、中東への貢献策の第一歩となると考える。

・アジア共通の基盤に立てるか

<松下氏>答え

アジアは島国が多く宗教もまちまちで富や知識の水準と開発の遅れもあり一つに纏まることが難しい。しかし血のつながりのある兄弟という捉え方もできる。「血は水よりも濃い」兄弟意識に徹していく事が大事になる。

過去の「脱亜欧米」と云ったアジア軽視の姿勢からの脱皮。

・アジアに共同体は可能か

<松下氏>答え

EC(現EU)共同体の実現のような共同体は困難である。しかし世界連邦の結成に比べたら遥かに楽です。その意味では共同体結成への世話役の一員を務めるべきでしょう。

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