人生問答(上) 松下氏から池田氏へ

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松下幸之助・池田 大作    

<松下氏>からの(質問)

1,人間というもの 

・人間としての役割 ~ 人間の権利と義務 

  過去を偲ぶ、未来を思う

<池田氏>答え

過去を偲ぶ ~ 過去からの教訓、知恵

未来を思う ~ 自分なりの努力、変革

・人間の本質とは

  一千年後、大きく変わっているでしょうか。

<池田氏>答え

一方では生命の内に、理性、知性、意識、良心、愛、他方では殺戮の魔性

善悪は表裏一体なる故に本質的には変わらない。

・肉体と霊魂

<池田氏>答え

  前頭葉という肉体の場に即して相当する心の働き(意志、情操、情感、創造性など)が顕現する。霊魂の存在は認めない。

肉体と切り離して精神のみの働きを実体化するところに誤りの原点がある。

・人間の欲望

<池田氏>答え

欲望は善でも悪でもない存在。他の存在に対して、どのような作用をするかによって善悪が生ずる。あらゆる存在が生死を繰り返しつつ支えあっている生命の世界にあっては、そこに真理を求めなければならない。

・本能について

  欲望と表裏一体をなすものである。

<池田氏>答え

 人間や動物が生まれつき持っている性質や能力であって、本能的欲望と心情的欲望(精神的)とに分類できる。~ 過去に近代西洋思想として台頭してきた理性の有無、この理性に対立する形として本能的欲望を取り上げ、是を抑圧し消滅しようと試みてきたが解決に至らず、個人の自我を確立することが大切であることに至る。

・知、情、意の調和  (円満な調和策)

 <池田氏>答え

人によりその重心の位置が異なっている。これが一種の個性と映る。

ある程度のアンバランスは当然の姿であって、それぞれ均等に備わっているというものではなく ~ 自己の生を開こうとする主体的な自我の確立であると思える。仏法では小我(利己的な自我)太我(宇宙大の慈悲)に基礎を置く生き方。

・男女のバランス

男女の産み分けは可能か。

<池田氏>答え 

 “天の摂理”産み分けは可能としても ~ 生命自体の持つ調節力と庶民の鋭敏な対応力が共に助け合って性の不均衡を作り出すことはない、自然のままの配慮に従うと思う。

・人間は不平等か

  外見に捉われるな

 <池田氏>答え

  人に不平等と見るか見ないかを強いる社会の価値観や通念が大きく影響力を持っている。目には見えない部分について深く見通す目を養うことが先決であり、「人間として精一杯生きる」ことである。

(善にも悪にもなり得る人間)

2.豊かな人生

・運命とは何か

“人事を尽くして天命を待つ”運命は服従すべきものではなく開拓するもの

<池田氏>答え

自分の努力ではどうしょうもないものを運命と名ずけた。最善を尽くすことの中に努力は含まれますしそれが運命の開拓にほかならない。

仏法の三世観(過去現在未来)因果律によれば運命とは生命活動によって開拓されていくものであるという。

・女性の幸福の条件

<池田氏>答え

二つの側面 ~ 一つは人間としてどう生きるか。一つは女性としての特質をどう発揮するか。法華経には生命の根本的次元からの男女平等(竜女の成仏)を説いています。第一点として自らが作った狭い枠を打ち破っていくこと。第二点としては本質と機能の側面を理解したうえで生き方を考える。

・人間としての成功とは

「立身出世」を成功者とする一方で人間としての成功というものについて

<池田氏>答え

経済的成功は人間の営みからすればほんの一部分における成功にすぎない。

経済、文化、社会、政治活動等々多岐にわたる。その人の諸々の側面から検討されることで、人間として誠実に生き抜いた人にして初めてその価値が時代を超えて光り輝くのではないだろうか。

・清貧か富の向上か (清貧に甘んずる)

<池田氏>答え

理想は貧しすぎてもならない、又豊か過ぎてもならない、中道が望ましい。

物質的豊かさに見合うだけの精神の豊かさが求められている時代でもある。

・私心を去って生きる (基本的に大切なもの)

<池田氏>答え

他人に対し自分と同じように人生を楽しむ権利を持って生きていることを認める事。“宗教のための宗教”ではなく自己の完成と他者への尊厳を認めその幸福のために尽くしていくこと。

「素直な心」

たんに従順な心というふうに受け取られがちですが

<池田氏>答え

“飾らない、ありのまま、まっすぐ、正直、柔和な心”

“汝自身を知れ”~ ソクラテス。

仏法では仏性(仏の心)・宇宙大我(利他と慈悲)と小我(エゴ)

・感謝の心(表現)

<池田氏>答え

自然でいい(無形の一念の姿勢にあり)

・自然の恵み

<池田氏>答え

単なる自然の作用にすぎない。その作用を起こしている自然の法則自体に慈悲を感ずる。私たち自身の存在そのものも単なる自然の作用に過ぎないことになる。それを恵みとして実感できるかどうか。

・煩悩をどう考えるか(煩悩を断つ)

<池田氏>答え

“煩悩を断つ” ~ 西洋哲学では理性をクローズアップし、制御しようとしてきた。儒教においても道徳、倫理を以って抑圧しようとしてきた。

仏法では“煩悩即菩提”と捉え煩悩を生かす・方向転換することで例えば怒るという煩悩を悪への対処として燃やすことで、極善の煩悩となるように。

・日に新たな精神

若さについて ~ 精神的若さは肉体的若さに影響する

<池田氏>答え

偉大な道を求める求道心と云えよう健康であるために(健康法)

<池田氏>答え

生命の内奥から湧き上がる本源の力が肉体と精神へとみなぎる状態。

腹八分、自然に触れる、呼吸法、芸術文学一生かけて悔いのない理想を抱く

・世間をどうみるか “渡る世間に鬼はない”

<池田氏>答え

人生にプラス面を受けている人又は個性の強い人にとっては鬼はなし。

逆にマイナス面を感ずる人にとっては鬼のような冷たい世間と映るようだ。

いずれにしても世間をうまく渡ろうとする姿勢であってはならない。社会の本質を見抜く力を養って、様々な矛盾と改善点に対して環境を変革し行く人間へと人間革命の道を進んでいってほしい。

・若い世代に望むこと

<池田氏>答え

青春とは一生の土台を築く時代である。吉川英治氏が、かって富裕な青年に対し早くから美しいものを見過ぎ美味しいものを食べていることはこんな不幸はない。といった言葉を残している。歓びを喜びとして感じる感受性が薄れていくということは青年にとって気の毒であると。真剣に勇気をもって強く生きてほしい。虚栄におぼれず、誠実な人生、豊かな個性、才能を伸ばすためにも基礎土台を確かなものにしていってほしい。

3,宇宙と生命と死

・死をどう考えるか

<池田氏>答え

この世を一回限りとする(快楽主義)捉え方なのか、それとも生命の永遠性を求める哲理;大乗仏教 ~ 死は生の断絶ではなく新たなる生への始まりとする。死という現実がこの世の生を充実させ人間らしい生き方を求めようとする根源的な力となりうるのではないか。

・安楽死を認めるか

<池田氏>答え

生ける屍となることを予測できない。人間は尊厳に死ぬ権利があるとの理由から安楽死を是認するアメリカの医師たち。人間の死はやはり心臓死を以って判定すべきです。

・人肉食について

<池田氏>答え

飢饉の際に食したと「立正安国論」の一説にあるようですが、自己生存を願う衝動に人肉食への思いはそのまま人間失格と断ぜざるを得ません。

・人工中絶の問題

<池田氏>答え ~ 反対です

・青年の自殺を防ぐには

<池田氏>答え ~ 幻想がその動機の主原因(歪み)

社会の不正や汚濁、正義感に溢れた青年には生き抜いてもらいたい。

4,繁栄への道

・共同意識の醸成

<池田氏>答え

人間は社会的動物である《アリストテレス》人類としての運命共同体に組み込まれている。妨げの重大なものは、企業、国家、学問の領域に渦巻く利己的な権力者などの心から流れ出たエゴそのものである。

・人間性、国民性、時代性

<池田氏>答え

この三つの要件の中で大事なのは普遍的人間性という要素

・すべてが共存する道

「小を捨て大を採る」~“一匹の迷える羊を救うため99匹を捨ててもよい”

<池田氏>答え

「大国の論理」~ 非情な権力の論理(国際間における大国のエゴイズム)

仏法では“一人を手本として一切衆生平等なり”個と全体との融合昇華“

二つの例を同一次元で論ずることはできない。経済活動において大のために小を犠牲にするといった捉え方をする場合がある。

・この地上に楽土を

<池田氏>答え

“娑婆世界即寂光土”・“衆生所遊楽”~ 生命の躍動、歓喜(楽しみ)

・社会福祉はどこまで

<池田氏>答え

経済大国から福祉国家へ為政者は福祉を責務として追及すべきであり、庶

民は福祉機構を使いこなす生命哲学に目覚めるべきである。

・適正な競争を行なうには (過当競争から適正な競争へ)

<池田氏>答え

競争の量的問題よりも質の問題。競争の悪の側面を拭い去る努力、そして競

争の量的増加とともに企業、国家、個人のエゴが忍び込む危機を避けねばな

りません。

・過当競争と政治

中小企業は日本の経済社会の基盤であり根幹

<池田氏>答え

過当競争は歪みの一つです。大企業優先の政府の姿勢は残念至極。

・自由と秩序の両立

<池田氏>答え

自動車のアクセルとブレーキのようにともに必要。人間の生命の重みとい

ったものを原点に捉える。

・自由は行き過ぎか(勝手主義)

<池田氏>答え

人間尊厳の基本理念の提示 ~ 積極的自由(エゴの克服)

・治安とインフレの関係 (物価の異常な上昇が治安の乱れ)

<池田氏>答え

インフレが人心の動揺をきたし、不安を呼んでいる。1929年の世界的大恐

慌に端を発した第二次世界大戦の主因を成している。第一次大戦時のドイ

ツにおけるインフレがヒトラーを出現させるまでに至っていることからも、

インフレこそ諸悪の根源である。

・治安維持の方策

抜本的方法、方策は何か(法律、警察はむしろ少なくする方向で)

<池田氏>答え

二つの側面から、一つには為政者として国民の安寧と秩序を保とうとす意

図もう一つは権力者自らの権力維持を意図するもの。前者が主体であるべ

きが後者の面が強くなると警察国家化してくる。古代の専制国家、近代から

の独裁国家がいい例ですが、人心の安定を図ることが第一です。

議会政治に対する不信、少数意見が無視されないように多数党のごり押し

を助長させないことです。一部の不労所得者が莫大な財をため込み多数の

国民が貧困に苦しむ社会では治安が保たれるはずがありません。

・法軽視の風潮 (順法精神を高める方法)

<池田氏>答え

一般市民より政治家や大企業の責任者、社会的リーダーの間に多い(汚職税

税、ザル法、骨抜き)という不名誉な呼び名が横行。指導者自身を正す事

・消費者のあるべき姿

<池田氏>答え

消費者は王様(主体者)、企業こそ暴君であり、現実は裸の王様です。

・調和の本質

<池田氏>答え

妥協、なれ合いというものが悪しき習慣として作られてきた。

真の対話、論議を尽くすことです。

・相互不信を取り除くには

<池田氏>答え

高次な共通目標を持つことで、人は力を合わせ共通の精神的基盤を見つけ

出す。人々の間に信頼を呼べるか否か。

・普遍的な正義はあるか

「正しい道理、人間行為の正しさ」

<池田氏>答え

自分には自分なりの正義があるといった一種の居直りに近い考え方がある。

生命の尊厳、人間が人間として生きるための基本的条件を守り抜くこと。

・力の正しい行使

<池田氏>答え

権力、財力、知力これらの持つ魔力というものに使われる哀れな存在。

金銭、権威、名声の奴隷となった著名人を見受けるに、庶民の切なる期待を

裏切らない、誠実な行動だけはしてほしい。慈悲と英知を輝かす努力の中に

のみすべての力は正しく行使される。

・平等と差別

<池田氏>答え

相対的に定められるもので、能力を身につける機会は平等に与えられる。

・現代における大義

<池田氏>答え

生命の尊厳を守ることが大義と同時に他者の生命の尊厳を守ることがより

重要な意味を持つことである。

・民主主義を生かすには

<池田氏>答え

日本の民主主義は国民の手によって作り出されたものではないが、理念そ

のものは世界の大半の国々と同じように現実とのギャップに悩んでいる。

この問題は大衆すべての質的向上、転換を前提とし目標としているところ

に内在する。民主主義の「はきちがえ」は国民よりも政治家のほうにあり

・民主主義体制について (守り育てる方策は)

<池田氏>答え

主権在民は古くギリシャ時代からの考え方で、日本において未完成なのは

人間が未完成なるゆえでありことに生命尊厳を制度的に保障するこれを守

り育てる大事な点は、大衆自身の個の自立と連携を高め行く以外にない。

・才能と職種 (多くの才能の必要性)

<池田氏>答え

職種は国家によって作られるものではなく、人間の工夫と社会の要請によ

って自然に生まれるものです。人間生命の破壊、権利の侵害を目的とした領

域例えば殺人兵器の研究生産、死の商人等は認めない。職種の自由な選択

・経営者の資格条件

<池田氏>答え

目的によって違ってくる。一般論としては指導者論による歴史的人物、教訓

を学ぶことから、人間としての全人格的な力 ①包容力 ②公平さ ③確

信 ④責任感 ⑤先見性 特に人材の育成が大切な要件となる。

5,宗教、思想、道徳

・人間の本質と宗教

<池田氏>答え

宗教は永遠に存在し続ける。~ 人間は宗教的存在である。

二条件 ①生死(生老病死の四苦) ②自由と欲望を求める存在

宗教とは、この矛盾を解決するために人間が生み出したものである。

・宗団、宗派は様々でよい

<池田氏>答え

信教の自由は絶対に守られるべきである。よって様々であらざるを得ない。

論争し競合しあう姿は共存である。あたかも企業の在り方と同じである

・宗教戦争の原因

<池田氏>答え

“仏教ほど平和で寛容な宗教はない”(トインビー)

神については、人格神としての性格はなくなり仏法で説く法に近い考え方になっている。尚、歴史上の宗教戦争は、世俗的な権力欲、経済的欲望が主原因であって宗教は利用されただけであったとされている。

・末法の意味

<池田氏>答え

日本における末法入り(1052年平安末期)。当時は釈迦仏教が思想哲学価値でありこの教えの力がなくなるとする思想が末法思想で末法万年も比喩。

・既成宗教はあきられたが

<池田氏>答え

人生をどう生きるか、生活をどうすべきか。才能ある畜生の域を出るには宗教は必要。宗教者(特権的地位に安住)の努力の欠如、形式化した宗教儀式(宗教の堕落)

・宗教と政治の在り方(祭政一致)

<池田氏>答え

活動次元においては政治と宗教は別。精神の次元では深く結び合っている。

本質的に見て政治と宗教は一体である。古代からあらゆる文明社会では祭政一致が原則であった。~ギリシャ、ローマ、エジプト、メソポタミア等

・縁なき衆生 (“縁なき衆生は度し難し”

<池田氏>答え

生命普遍の法則 ~ 因と縁が和合“仏縁なきものは救いようがない”

・創価学会発展の要因(郷里の正しさ)

<池田氏>答え

日蓮仏法の哲理の正しさと偉大さによるとする信念。これを現代に実践原理として正しく展開してきたのが創価学会である。時代性を無視して教条的に用いずに、信仰によって実践(人間革命、生活革命、家庭革命、折伏等)を続けて来たことと恩師戸田前会長の存在にある。世界広布が目的である。

・人類滅亡論と仏法

<池田氏>答え

成、住、壊、空を繰り返す宇宙観。~仏法に見る末法世相は終末論ではなく、新文明開拓への道を示す。平安末期において当時の為政者の誤った宗教観(浄土教)を諫めた日蓮の国家諫暁に見る。

・モーゼの十戒の意味

<池田氏>答え

唯一絶対神の礼拝、偶像の禁止、道徳的な戒律。小乗仏教の五戒(不殺生、不偸盗、不妄語、不邪淫、不飲酒)戒律は終着点ではなく出発点である。これらの戒律を守ることが修行をしていく上の最低条件である。「受持即持戒」

・善悪の判断基準(絶対的基準)

<池田氏>答え

生命の尊厳こそが絶対的基準である。移り変わる現実の中で善にも悪にもなり得るという考え方。

・百年後の世界の思想は

<池田氏>答え

他人を教え忠告する権利はあるが、強制する権利はない。人それぞれである。

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